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2020/2/19

中小企業の衛生管理を強化!食品工場の衛生教育のポイントとは

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すでに感じられている企業も多いと思いますが、食品工場での外国人の割合が急拡大しています。とはいえ、外国人に向けた衛生教育が進まず、頭を抱える経営者も多いのではないでしょうか。そこで、今回は衛生管理のプロフェッショナル高木敏明が外国人に向けた衛生教育のポイントをご紹介します。

中小企業からのよくある質問

食品工場に新入社員やアルバイト、外国人などが増えているため、衛生管理のためにも従業員への衛生教育に取り組みたいと思っています。衛生教育のポイントを教えてください。

この質問に回答する専門家

高木 敏明さん画像

中小企業の食品衛生管理エキスパート

中小企業診断士

高木 敏明

大手食品会社で魚肉練り製品・生めん類・餃子・焼売・業務用冷凍食品などの商品開発、食品衛生管理、HACCPシステムの構築及び運用などに従事。

目次

見出しアイコン急拡大する外国人労働者


外国人労働者の急激な増加

日本における外国人労働者の数は、2008年の48万6千人から2018年には146万人とこの10年間で約100万人増加しています。一方で、日本の生産労働人口は減少の一途。これにより、日本の労働人口に占める外国人労働者の割合は急激な勢いで高まってます。


外国人労働者の活躍が顕著な製造業

また、2018年の厚生労働省発表の統計によると、外国人の活躍が最も多い産業は、製造業(全体の約30%程度を占める)となっており、その数は今後も増え続けることが予想されています。
このことからも食品業界そして、食品加工工場でも外国人労働者にあわせ、グローバルな対応が求められていることがわかります。

見出しアイコン法的に求められるグローバル対応

世界基準での衛生管理が必須に

働き手の変化と合わせて、もう一つ注目したいのか法制度による変化。世界の衛生管理基準を満たすために日本でもHACCAPによる衛生管理が制度化されます。この法的な視点からもよりグローバルな衛生教育が必要となっています。
伝承教育からの脱却が重要な課題

食品関連業種の中小関連企業の多くは、OJTでの伝承の形でいわば職人技のように行われているケースが多く、それでも十分に効果を上げていました。しかし、現在のように食品工場においても外国人労働者やアルバイト・パートタイマーの従業員が増えてくると、伝承では対応しきれません。今後は伝承教育から脱却し、誰もが理解できることを前提としたグローバルな衛生教育が求められます。

見出しアイコン衛生教育のグローバル対応に必要な3つの視点

外国人を含む誰もが理解できる衛生教育を目指すにあたり、考えるべき視点が3つあります。

①日本語の理解促進

外国人には、食品や機械・器具の名前を日本語で表示したり教えたりすることが大切です。製造現場では、日本人から指示を受けることも多いので、食品や機械・器具の名前を日本語で言われて時に、とっさに理解できないと仕事に支障が出ます。

②日本文化や習慣も理解浸透

日本の文化や習慣を学んでもらうことで、コミュニケーションがスムーズになります。言葉が通じるだけでは、日本人の行動を十分に理解できません。日本の文化や習慣に親しんでもらうことで意思の疎通がうまくいき、仕事でのコミュニケーションも円滑になります。

③理解の徹底

教えた内容の理解度を確認することが重要です。衛生教育が終わった後に「わかりましたか?」と聞くと「はい」といいますが、ほとんどわかっていないことが多いのが実情です。相手が理解していると思い込んでいると、仕事のミスにつながります。

見出しアイコン具体的な取り組み方

①日本語の理解促進

・写真とローマ字で説明を掲示する
覚えてもらいたい食品や機械・器具を写真に撮り、一覧表にしてそれぞれの写真の下にひらがなとローマ字で名前を記載して、掲示したり教育に使ったりするのが効果的です。

・テキストは母国語に翻訳する
座学などの集合教育では、外国人従業員の母国語に翻訳したテキストが有効です。写真やイラスト入りが望ましいです。または日本語と合わせてローマ字表記を心掛けます。

・日記をつける
日本語が少しでも書ける外国人には、自分の気持ちや悩みの日記をつけてもらい、それを添削するという方法も有効です。

・あえて日本語で教育する
ついつい外国語を使って説明しようと取り組みがちですが、日本での多くの仕事は日本語で行われます。外国語に頼ることなく、日本語で話すことも必要です。

②日本文化や習慣も理解浸透

・班長制度を導入する
同じ母国の人の中から日本語ができる「班長」を選び、「班長」を通じで教育すると効果が上がります。

・日本の年中行事に参加してもらう
例えば日本の年中行事、夏の盆踊りや花火大会、冬の餅つきなどに参加してもらったり、ほかの日本特有のイベントを体験してもらうことで、日本文化への理解が深まります。

③理解の徹底

・理解度小テストを実施する
決して難しいテストを用意するのではなく、〇×式の簡単なもので結構です。確実に理解してもらいたいポイントに関して小テストを作成し実施すると効果的です。

・座学+現場で2度教える
教えたことを現場でもう一度教えることです。まず、やって見せてお手本を示します。次に実際にやってもらって理解度を確認する方法です。この方法はもし十分でなかったら直ぐにフィードバックができるので、手間はかかりますが効果は高いです。

その他

・e-ラーニングを活用する
今後の外国人従業員への効率的な衛生教育のツールとしてe-ラーニングを取り入れることも検討されるとよいと思います。
(日本語・英語・中国語・ベトナム語・ネパール語に対応した衛生教育)

・行政から発信されている資料を活用する
行政やその外郭団体が外国人向けの衛生教育資料を作成している例がありますので参考にしてください。
(食品製造業に従事する技能実習生の安全健康の確保)
外国人従業員に対する衛生教育は、繰り返し行うことが重要です。時間とお金もかかりますが、最も大事なことは、人として日本人と同じような気持ちで接することだと思います。

専門家紹介


高木 敏明さん画像

中小企業の食品衛生管理エキスパート

中小企業診断士

高木 敏明

専門分野

□ 食品開発・食品加工:保存性とおいしさを両立させる加工方法

□ 食品衛生:食品従事者が、微生物の性質をよく知ることで微生物がまるで目に見えるようにすること

□ HACCPシステムの構築:お金をかけずに仕組みを工夫する

□ 食品表示:経営者が知っておくべき食品表示のポイントを指導

自己紹介

大学では、食品微生物学を専攻。イカの塩辛や飯寿司などの水産発酵食品の機序にも詳しい。大手食品会社で、魚肉練り製品・生めん類・餃子・焼売・業務用冷凍食品・高温殺菌食品などの商品開発、食品衛生管理、HACCPシステムの構築及び運用、環境マネジメントシステムの構築及び運用に従事。現在は総菜工場のHACCP指導や食品加工、食品衛生や食品表示のセミナーの講師などを担当

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