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2020/5/16

中小企業が対応すべき食品表示法に対応した食品表示。気を付けるべきポイントは?

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2015年から続いていた猶予期間が終わり、いよいよ食品表示法の適用が義務化されました。きっと対応に追われている中小企業の方が多いのではないでしょうか。今回は衛生管理のプロフェッショナル高木敏明が食品表示法への対応について事例を交えながら詳しくアドバイスします。

中小企業からのよくある質問

食品表示基準に沿った食品表示に対応しなければと思っているのですが、気を付けるべきポイントなどがあれば教えてください。

この質問に回答する専門家

高木 敏明さん画像

中小企業の食品衛生管理エキスパート

中小企業診断士

高木 敏明

大手食品会社で魚肉練り製品・生めん類・餃子・焼売・業務用冷凍食品などの商品開発、食品衛生管理、HACCPシステムの構築及び運用などに従事。

目次

見出しアイコン食品表示法への対応ですべきこと

食品表示法への対応とは?
2015年4月に「食品表示法」が施行されました。この法律は以前、食品衛生法とJAS法と健康増進法に分かれていたそれぞれの「食品表示」の部分を統合してできた法律です。

いつまでに何をすべきか?
食品表示法への対応は、今年の3月31日で5年間の猶予期間が終わり、4月1日から製造する食品は食品表示法に示された「食品表示基準」に対応した表示方法で表示しなければならなくなりました。

対応しなかった場合どうなる?
食品表示法の基準に違反した場合、国から改善命令や回収命令が出され、事業者名が公表されます。これらの命令に従わない場合は、最大で3年以下の懲役や300万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)が科せられます。

見出しアイコン気を付けるべきポイントはココ

食品表示法への対応で 行うべき10のポイント
従来の食品表示基準から変更になった以下10か所に適切に対応することが必要です。

① 加工食品と生鮮食品の区分の統一
② 製造所固有記号の使用に係るルールの改善
③ アレルギー表示に係るルールの改善
④ 栄養成分表示の義務化
⑤ 栄養強調表示に係るルールの改善
⑥ 原材料名表示等に係るルールの変更
⑦ 販売の用に供する添加物の表示に係るルールの改善
⑧ 通知等に規定されている表示ルールの一部を基準に規定
⑨ 表示レイアウトの改善(原材料と添加物は、区分を明確に表示)
⑩ 新たな機能性表示制度の創設

食品の分類にご注意を
食品の分類によって表示すべき内容が変わってきます。必ず最初に対象食品が加工食品なのか、生鮮食品なのか、一般消費者向けなのか業務用なのかなどの分類を確実に行うことです。表示項目についての変更ポイントの詳細は以下のサイトに詳しく掲載されています。確認しながら表示を作成してください。
東京都福祉保健局 食品衛生の窓 食品事業者向け情報

わからなかったら専門家に相談
食品表示法は、3つの法律の食品表示に関わる部分が統合されて以前と比べるとわかりやすくなりましたが、完全にそれらを把握するのは困難です。
例えば、加工食品と生鮮食品の区分。例えば以前ドライマンゴーは生鮮食品に区分されていましたが、食品表示法では加工食品に分類されています。マグロの刺身のパックは生鮮食品ですが、マグロやサーモンやはまちなどが入った刺身の盛り合わせは、加工食品です。迷ったら、専門家に確認しましょう。

見出しアイコン食品表示への具体的な対応(アレルギー表示)

もっとも注意が必要な3つの表示
食品は消費者の健康危害や健康増進に直接関係するもの。そのため、食品表示の中でも以下の3つに関しては特に対応に力を入れる必要があります。

・アレルギー表示に関わるルールの改善
・栄養成分表示の義務化
・表示レイアウトの改善


アレルギー表示に係るルールの改善
ここではまず「アレルギー表示に関わるルールの改善」について詳しく説明します。アレルギー表示への対応では、二つのポイントでの対応が必要です。

①「特定加工食品」及びその「拡大表記」の廃止
以前は「特定加工食品」の表示があれば、それに含まれるアレルゲンの省略が認められていましたが、今後は「マヨネーズ」と表示してあっても、アレルゲンの「卵を含む」の表示は省略できません。同様に「豆腐」と表示してあっても、アレルゲンの「大豆を含む」の表示は省略できません。

②「個別表記」と「一括表記」
アレルギー表示は原則として「個別表記」で行います。「個別表記」とは、アレルゲンを含む原材料や食品添加物の個々の後ろに括弧をつけてアレルゲンを含む旨を表示する方法です。例えば、「マヨネーズ(卵を含む)、焼き豆腐(大豆を含む)」というように表示します。ただし、一定の条件を満たせば「一括表記」をすることができます。

【個別表記】の例

「一括表記」できる条件として表示面積に限りがあり個別表示が困難な場合等は、例外として、原材料名の最後(原材料と添加物を、事項欄を設けて区分している場合は、それぞれ原材料欄の最後と添加物欄の最後)に全ての特定原材料等をまとめて 『 (一部に○○・△△・□□を含む) 』 と表示する方法も認められています。なお、個別表示と一括表示を併用した表示は、認められていません。

【一括表記】の例

見出しアイコン食品表示への具体的な対応(栄養成分表示、表示レイアウト)

続けて最も注意が必要な3つの表示の残り2つ、栄養成分表示と表示レイアウトについて説明します。

栄養成分表示の義務化
「栄養成分表示」という項目の表示と、その項目における以下成分の表示が義務化されました。それぞれの成分がどれだけ含まれているのか、明記する必要があります。

【栄養成分表示(食品単位)】
①エネルギー(熱量)
②炭水化物
③たんぱく質
④脂質
⑤食塩相当量※
※以前はナトリウム値として表示されていましたが、現在は食塩相当量として表示。

表示レイアウトの改善
表示レイアウトの 改善で重要なことは、原材料と添加物は区分を明確に表示することです。
明確に区分する方法は、次のような方法があります。適切な方法を取り入れてください。

①原材料表示の後に1行改行する。
②添加物の欄を別に設けて表示する。
③原材料名表示と添加物表示の間にスラッシュ「/」を入れて区別する。
表示面積を有効に活用するために③の「/」を入れて区別する場合が多いです。

【表示例】
品名:昆布巻き鯵棒鮨
原材料名:米(国産)、鯵、昆布、醸造酢、砂糖、食塩、みりん、醤油、清酒/調味料(アミノ酸等)(一部に小麦・大豆を含む)

消費者の信頼性をつくる
「食品表示」は食品製造業者と消費者をつなぐ情報の架け橋です。表示によって正確な情報を伝えることが、供給者と消費者の信頼性の確保につながります。ぜひ一緒に食品表示対応を乗り切っていきましょう。

専門家紹介


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中小企業の食品衛生管理エキスパート

中小企業診断士

高木 敏明

専門分野

□ 食品開発・食品加工:保存性とおいしさを両立させる加工方法

□ 食品衛生:食品従事者が、微生物の性質をよく知ることで微生物がまるで目に見えるようにすること

□ HACCPシステムの構築:お金をかけずに仕組みを工夫する

□ 食品表示:経営者が知っておくべき食品表示のポイントを指導

自己紹介

大学では、食品微生物学を専攻。イカの塩辛や飯寿司などの水産発酵食品の機序にも詳しい。大手食品会社で、魚肉練り製品・生めん類・餃子・焼売・業務用冷凍食品・高温殺菌食品などの商品開発、食品衛生管理、HACCPシステムの構築及び運用、環境マネジメントシステムの構築及び運用に従事。現在は総菜工場のHACCP指導や食品加工、食品衛生や食品表示のセミナーの講師などを担当

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