人事・労務管理

人材採用

2019/11/19

中小企業におけるリファラル採用のコツと注意点

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昨今、中小企業では人手不足で人材採用が難しい中、リファラル採用が注目されています。リファラル採用は、従業員が自分の友人や知人を会社に紹介・推薦する採用方法で、低コストでマッチング率が高いため、中小企業に適した採用方法といえます。

今回は、労務のスペシャリストである社労士FP事務所オフィス ア ライト代表の杉山達郎氏がお答えします。

中小企業からのよくある質問

最近、よく言われるリファラル採用に興味があるのですが、中小企業でもできるのでしょうか? またそのやり方を知りたいです。

この質問に回答する専門家

杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

慶応義塾大学卒業後、株式会社ニコン入社。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組み、現在は「労使がわかる社会保険労務士」と中小企業経営者の支援をしている。

目次

見出しアイコンすぐに辞めてしまう貴重な人材。対応策は?

経営課題は企業・時代により、それぞれいろいろなものがありますが、昨今の重要なトピックの一つとして、人材不足があげられます。人が採用できないとか、せっかく採用にたどり着いてもすぐ辞めてしまって定着しないといった悩みをあげられる経営者は大勢いらっしゃいます。

中小企業の課題は人材不足と定着率の悪さ
募集やインターン開催など採用にかけるコストや、さらに入社後の教育にかける費用など、採用・定着にかかる費用は少なくありません。採用するだけでもコストがかかるのに、その上ようやく一人前になったと思った頃に退職されては、採用・教育にかけた費用や時間がすべて無駄になってしまいます。

特に中小企業にとっては、採用・定着費用を捻出することは簡単ではありません。費用を無駄にしないためにも、できるだけ確率の高い採用をして、早期退職しないように定着させることが重要です。

注目の採用方法「リファラル採用」
こうした課題を解決するための一つの有効な方法が、最近話題のリファラル採用です。 リファラル採用とは、その会社の従業員の人脈による紹介や推薦により採用につなげる一つの採用手法です。
求人サイトや人材紹介会社を用いるのではなく、自社の従業員の知人や友人などから、自社に向くと思われる候補者を紹介・推薦してもらう制度です。
紹介イコール採用ではないので、一次面接が省略される場合もありますが、通常は紹介後に面接が行われます。

見出しアイコン中小企業でもできるリファラル採用

リファラル採用のメリット・デメリット
リファラル採用のメリットは、マッチング率が高いことです。
紹介する従業員は、会社の良い点悪い点を理解していますから、候補者に事前にそれを伝えることができます。また紹介する候補者の性格や思考なども把握しているので、それを採用担当者に伝えることである程度のスクリーニングができます。
その上で双方良さそうだということになれば、採用プロセスにつながるわけですから、通常の採用よりもミスマッチが少なく、採用率が高く、また定着率も高くなることが期待されます。
さらに、求人サイトや人材紹介会社などへの費用もかからないので、低コストな採用方法であるともいえます。

一方、デメリットとしては、従業員からの紹介ですから、あらゆる候補者層を紹介できたり、いつでも紹介できるとは限りません。
候補者は知人・友人に限定されますので、欠員補充用のような急な採用はできない場合や、特定の職種や年齢層をターゲットとした場合、そもそもその層に知り合いがいないということもあります。

中小企業におけるリファラル採用のやり方
実際にリファラル採用を行うときには、紹介者と候補者の人間関係に配慮することが必要です。
候補者が無事に採用されればよいのですが、不採用になるケースもあり得ます。その場合、紹介者と候補者の間の人間関係にひびがはいる恐れもあり、慎重に対応してあげることが必要です。
例えばいきなり公式な面接を行う前に、非公式な食事会のような場を設定し、採用担当者が内々に確認するなど当事者間の人間関係が損なわれないようにしてあげることも考えられます。

見出しアイコンリファラル採用が不法行為になるかも!?

リファラル採用を積極的に行うために、紹介する従業員に報酬を支払うことを検討する経営者もいます。しかし、これについては法律上注意すべきことがあります。

リファラル採用が職業安定法・労基法に抵触する?
本来、法律では人材紹介業者のような許可を得た企業以外では、「業」として「人を紹介して金銭を得る」ことは許されず、例外として会社が従業員に賃金、給与その他準ずるものを支払う場合のみ可能とされています。

職業安定法40条(報酬の供与の禁止)
「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給与その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」

労働基準法6条(中間搾取の排除)
「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」

法律への対応
もし紹介した従業員に報酬を支払う場合は、就業規則等における表彰制度や賃金規程の中で、紹介制度に基づく報酬であることを明文化しておく必要があります。
報奨金があまりに高額であったり、また知人以外にSNS等で広範に紹介希望者を募るような行為は「業として他人の就業に介入して利益を得る」ことになる可能性があり、注意が必要です。

リファラル採用を実際に導入しようとする場合は、必要に応じて事前に社会保険労務士や労働基準監督署に、法律に抵触しないか確認されると良いでしょう。

見出しアイコン中小企業がリファラル採用を使いこなすポイント

リファラル採用は、コストも安価でミスマッチの少ない、中小企業にマッチした採用方法といえます。
ただし、肝心なことは「従業員に紹介してもらう」ということです。
従業員が紹介するわけですから、その従業員が会社に満足していないと紹介してくれません。いくら報酬をもらっても、自分が働きたくない会社であれば、紹介しようという気にならないはずです。
給料はちょっと低いけど、やりがい・働きがいのあるこんな良い会社なんだ、と従業員に言ってもらえるような、そんな会社であることが一番重要だと考えます。

専門家紹介


杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

専門分野

□ 人事・賃金制度の設計・構築、運用改善

□ 働き方改革制度導入・運用提案

□ 人事労務を中心とした経営管理支援

自己紹介

慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社ニコン入社。グループ会社である株式会社那須ニコン代表取締役、株式会社ニコン・エシロール執行役員生産企画ゼネラルマネジャー、オプトス株式会社取締役経営管理部長などを歴任。30代には、会社を休職しニコン労働組合中央執行委員長も担当。現在はニコンを早期退職し、オフィス ア ライト代表へ。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組んできました。その経験を基に、現在は「労使がわかる社会保険労務士」として中小企業経営者の支援をしている。

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