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2020/3/11

シニアで人手不足対策!中小企業のシニア人材活用のコツ

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人手不足は、現在の中小企業における重要な経営課題です。この課題は一過性のものではなく、将来にわたり継続するものです。人手不足を解消するためには、シニア人材の特徴を活かして活用することが有効な施策になります。今回はシニア人材活用のコツをオフィス ア ライト 代表の杉山達郎氏が解説します。

中小企業からのよくある質問

正社員の採用が上手くいかず若手が減り、人手不足で困っています。シニア人材の活用によってパフォーマンスを上げたいと思っているのですが、効果的な活用法を教えてください。

この質問に回答する専門家

杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

慶応義塾大学卒業後、株式会社ニコン入社。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組み、現在は「労使がわかる社会保険労務士」と中小企業経営者の支援をしている。

目次

見出しアイコン人材不足は将来にわたる経営課題になっている!

昨今、人材不足の悩みをよく耳にします。少子高齢化という日本の人口構造の変化を考えれば、人材不足は将来にわたる継続的な課題といえます。この課題解決には、しっかりとした対策を取ることが重要です。

多くの社長が困っている人材不足

中小企業には、いろいろな経営課題があります。もちろん大企業も含め、経営に課題はつきものですが、特に中小企業にとって重要な課題として、人手不足があげられます。筆者は多くの中小企業の経営者と仕事をしていますが、大半の社長が「人手不足で困っている」と話します。後継者不在や経営難に陥り廃業・倒産する中小企業も発生するなど、人材不足は中小企業の経営に深刻な影響を与えています。

今後も人材不足は継続する見通し

人手不足の要因は、少子化・高齢化による人口構造の変化です。
内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によれば、
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf
日本の65歳以上人口は、1950年は総人口の4.9%でしたが、2018年は28.1%になっています。そしてこの比率はさらに上昇し、10年後の2030年には31.2%となる見込みです。一方で、15~64歳人口はピークであった1995年の8716万人から2018年に7545万人となり、2030年には6875万人まで減少すると推定されています。 このような動向を考えれば、人手不足は一過性の問題として片づけることはできません。将来にわたる継続的な経営課題と認識し、しっかりした対策を実施することが求められます。

見出しアイコンシニア人材の活用は人材不足に対する有効な施策

人手不足の時代には、女性や高齢者、外国人など多様な人材を活用することが重要とされています。その中でもシニア人材は有効な即戦力となりうる、今後における貴重な人材です。

シニア世代でもまだまだ元気

一昔前のシニア世代と現在を比較すると、現在の方が、はるかに元気な方が多くなっています。それは、医療技術の進歩や食生活を中心とした生活環境の改善、労働環境の改善などによるものと考えられます。 人生100年時代において、60代70代のシニア世代はまだまだ活躍できる時代です。

シニア世代の労働に対する意識

現在60歳以上で就労している人のうち、42.0%は「働けるうちはいつまでも」、またそれを含めて8割近くの人が70歳くらいまたはそれ以上働きたいと考えています。
(内閣府の「令和元年版高齢社会白書」
(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/pdf/1s2s_01.pdf))
働きたい理由もいろいろあります。もちろん「収入を得たい」という理由が多いのですが、それ以外にも、「働くのは健康に良い」「社会に接することで活力になる」「仕事を通じて友人や仲間を得る」などと多様化しています。 このように、労働意欲があって元気なシニア世代に活躍してもらうことが、今後の企業における人材不足を解消する重要な施策と言えます。

見出しアイコン有効なシニア人材の活用方法とは

シニア人材のポテンシャルを有効に引き出すには、シニア人材に合った働き方をしてもらいましょう。現役世代とは少し違った活用方法がポイントです。

経験・スキルを有効活用してもらおう

シニア人材がこれまで長年培ってきた技術技能、経験は貴重なものです。現場の技術技能だけではなく、品質管理やメンテナンス、法務や輸出入などビジネスにおけるさまざまな専門的知識・経験を有するシニア人材はたくさんいます。また、これまでの経験からコミュニケーション能力が高いシニア人材も多く、適切な場を提供することで、即戦力として活躍することが期待できます。 また、人材を社内で育成しようとすると相当な時間がかかります。経験豊富なシニア人材は、教育係としても活用することができます。

柔軟に働いてもらおう

シニア人材は、必ずしもフルタイムで働かせなくてもいいでしょう。現役時代のように、家族や生活のために一生懸命収入を得るというよりも、仕事と自分の時間のバランスをうまく取って双方を充実させたいと考えているからです。 その点を活かすようにしましょう。例えば、シニア人材は、一般的に早起きが苦にならず朝に強いのが特徴です。そこで、早朝のシフト勤務や始業前の準備などを担当してもらうのです。また平日に休めるので週末の休みにこだわらないというシニア人材もいます。そのような方に集中的に週末のシフトに入ってもらうことも考えられます。このほか、週2~3日勤務や短時間勤務など柔軟に働いてもらうことで、上手く現役世代の“穴”を補完することが可能です。

見出しアイコンシニア世代を活用する上での留意点

元気なシニア人材が多いとはいうものの、現役世代と全く同じという訳にはいきません。シニアの特徴を理解して、活躍してもらいましょう。

シニア人材に任せる業務には工夫と配慮を

最近のシニア人材は元気があるとはいえ、現役世代と比べれば身体機能・認知能力に不安もあります。したがって、安全や健康に配慮する必要があります。例えば、重いものを持つのは現役世代に任せるとか、集中力が必要な作業は長くならないようにする、こまめに休憩をとるように指導するなどが考えられます。毎朝声をかけて体調を確認することなども有効です。

シニア世代にも働きがいを感じてもらおう

シニア人材であっても働くことで認められたいと考えるのは、現役社員と同様です。ですから、シニア人材用の仕事や評価制度があると良いでしょう。きちんと評価することで、シニア人材にも会社の期待が伝わり働きがいにつながります。 またシニア人材と現役世代の社員との接し方も重要です。シニア人材にとっては年下の上司が存在するケースも珍しくありません。しかしその場合は肩書や立場によらず、同じ働く人として尊重しましょう。もちろんシニア世代も年下だからといって言動には気を付けてもらわなければいけません。いずれにせよ働く者同士、人格を尊重することは老若男女問わず必要なことであり、ハラスメント対策にも通じます。

見出しアイコン専門家にも相談してシニア世代の活用を推進しよう

シニア世代を活用する場合、「特定求職者雇用開発助成金」「65歳超雇用推進助成金」といった助成金を受けることができます。また新しい働き方を導入するのであれば、就業規則の改定も必要になる場合があります。こうしたケースの場合、専門家に相談するとスムーズに進めることができます。 シニア世代をうまく活用し、人材不足の解消や会社の発展に役立ててください。

専門家紹介


杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

専門分野

□ 人事・賃金制度の設計・構築、運用改善

□ 働き方改革制度導入・運用提案

□ 人事労務を中心とした経営管理支援

自己紹介

慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社ニコン入社。グループ会社である株式会社那須ニコン代表取締役、株式会社ニコン・エシロール執行役員生産企画ゼネラルマネジャー、オプトス株式会社取締役経営管理部長などを歴任。30代には、会社を休職しニコン労働組合中央執行委員長も担当。現在はニコンを早期退職し、オフィス ア ライト代表へ。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組んできました。その経験を基に、現在は「労使がわかる社会保険労務士」として中小企業経営者の支援をしている。

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