人事・労務管理

人事制度

2019/12/26

働き方改革により、中小企業が就業規則を見直す際のポイントとは

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就業規則は「会社のルールブック」などと呼ばれていますが、中小企業では作成するのが精一杯でなかなか活用されていない場合が見受けられます。働き方改革で働き方や労働条件が変更になる場合は、就業規則も見直すことが必要です。
今回は、中小企業が就業規則を見直す際のポイントについて、労務のスペシャリストである社労士FP事務所オフィス ア ライト代表の杉山達郎氏がお答えします。

中小企業からのよくある質問

何年も就業規則を変えていないので、そろそろ見直したいと思っています。見直すうえで押さえるべきポイント、注意点などあれば教えてください。

この質問に回答する専門家

杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

慶応義塾大学卒業後、株式会社ニコン入社。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組み、現在は「労使がわかる社会保険労務士」と中小企業経営者の支援をしている。

目次

見出しアイコン就業規則は作成・見直しだけで一苦労?

中小企業では、就業規則をいざ作成したり、見直そうと思っても、実際にどうやって行なえばいいのか悩むケースもあると思います。

テンプレートの就業規則では意味がない
就業規則を作成する場合、簡単にすまそうとするならば、ネット等でダウンロードした就業規則のテンプレートに自社名を書き込んでそのまま使うという方法があります。実際に厚生労働省では「モデル就業規則」を公開しています。
しかし、そのようなテンプレートをそのままコピーすればいいわけではありません。なぜなら、各企業には法律の範囲内で独自のルールがあり、モデル就業規則は、当然ながらそこまで考慮されていないからです。モデル就業規則はあくまで参考として用いるべきものであって、それをもとにそれぞれの企業特有のルールを記載する必要があります。

就業規則は作成した後も見直しが必要
一度就業規則を作成した後も、その後の法改正などに対応し、見直す必要があります。ところが、十分な対応ができず現状に合わなくなってしまったケースがあります。また、手間を省くため外部委託で高いお金を払って作成したものの、机の中に放置され使われていないという場合も見受けられます。

このように、作成に手間がかかったり、作成しても利用されない就業規則は、本当に必要なのでしょうか?

見出しアイコン会社に就業規則が必要な理由とは


就業規則は、一定条件下の会社では、法律上作成することが義務付けられています。しかし、義務ではない会社にとっても必要なものと考えるべきです。

一定条件下の会社は就業規則が義務付けられている
就業規則は、労働基準法第89条で「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し行政官庁に届け出なければならない。」とされています。具体的には、始終業時刻・休憩時間などの労働時間や賃金、退職に関する事項などは必ず記載しなければなりません。また、退職金や表彰・制裁の種類・程度などを実施する場合にも記載しなければならない事項があります。

条件を満たさない会社も就業規則が必要
国の秩序を守るものが法律であるように、企業の秩序を守るものが就業規則です。もし国に法律がなかったら、泥棒や強盗があふれているかもしれません。同様に会社でも、就業規則で守るべき事項を定めることで、秩序が保たれます。

例えば問題を起こす社員を懲戒したい場合、労働基準法では「その旨を就業規則に記載しておくことが必要である」とされています。即ち、就業規則がないと問題社員に対して懲戒を行うことができないため、労働者が10人未満の会社でも就業規則が必要と言えるでしょう。

見出しアイコン就業規則を活用するメリットとは

就業規則が必要であることはご理解いただけたかと思いますが、一方で「就業規則は義務だから…」としぶしぶ作成されている場合もあるかもしれません。しかし、就業規則にはメリットもあります。法律上常時10人以上の労働者を使用する会社(一定条件下の会社)はもちろん、10人未満の会社にも当てはまるメリットとして、以下が挙げられます。

自社のルールを明確化できる
まず一つ目のメリットとして、就業規則を作ることにより、自社のルールを明確化できることが挙げられます。明確にした会社のルールを文章化し、社員にそれを理解させることで、社内のトラブルを未然に防ぐことができます。
さらに従業員にとっても、就業規則上で賃金や労働時間などを明らかにすることで、労働条件に対する不安がなくなります。それにより、社員間の取り扱いに公平感を感じ、会社に対する信頼が生まれます。

社員教育の際に活用できる
二つ目のメリットは、社員教育に活用できるということです。例えば、新入社員が入社した際に就業規則を使って会社のルールを教育することができます。また、新任管理者が部下を管理する上で必要な知識を身に着けるための教材とすることも可能です。
このように「作成しなければならない就業規則」ではありますが、きちんと作成し積極的に活用することで、会社にとっても従業員にとっても「役立つ就業規則」となり得ます。

見出しアイコン有効な就業規則を作成し、活用しましょう

作成義務のある中小企業では、就業規則を作成すること自体が目的化されてしまい、活用されないケースが散見されます。一方、働き方改革など法令は随時改定されており、就業規則はその都度見直す必要があります。
有効な就業規則は時間と労力をかけて作成しなければいけないものですから、作成した際にはぜひ有効に活用していただきたいと思います。

専門家紹介


杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

専門分野

□ 人事・賃金制度の設計・構築、運用改善

□ 働き方改革制度導入・運用提案

□ 人事労務を中心とした経営管理支援

自己紹介

慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社ニコン入社。グループ会社である株式会社那須ニコン代表取締役、株式会社ニコン・エシロール執行役員生産企画ゼネラルマネジャー、オプトス株式会社取締役経営管理部長などを歴任。30代には、会社を休職しニコン労働組合中央執行委員長も担当。現在はニコンを早期退職し、オフィス ア ライト代表へ。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組んできました。その経験を基に、現在は「労使がわかる社会保険労務士」として中小企業経営者の支援をしている。

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