情報化・IT活用
2020/5/16
中小企業が悩みがちな、社内エンジニアの評価の仕方。そのやり方とは
中小企業が順調に売上を伸ばし、組織の規模が大きくなってくると、ITエンジニアを自社で雇い入れることがあります。しかし、ITエンジニアは、社業に直接携わる社員に比べ異質な仕事をするため、おのずと評価の仕方も他の社員とは異なります。今回は社内エンジニアの具体的な評価の仕方について、独立コンサルタントの三林英毅氏が解説します。
中小企業からのよくある質問
社内にエンジニアがいるのですが、マネジメント層がITに弱いため、どのように評価すればよいのかわかりません。良い方法があれば知りたいです。
この質問に回答する専門家
三林英毅
大手SI会社、監査法人系コンサルティング会社、生命保険会社にてエンジニア、コンサルタントとして多くのプロジェクトに従事。証券会社系総合シンクタンクにて内部管理、財務・経理の業務を行い2015年に独立。
目次
中小企業の社内エンジニアは大企業と何が違う?
中小企業がITエンジニアを雇用する場合と、大企業が雇用する場合とでは、ITエンジニアの置かれる環境や、業務の一般的な傾向が異なります。どのように異なるのか、具体的に見ていきましょう。中小企業はITエンジニアの人数が少ない
複数のITエンジニアを雇用し、IT業務の役割分担ができる大企業とは異なり、中小企業で雇えるITエンジニアの人数には限りがあります。そのため、「ひとり情報システム部」状態になることもあるでしょう。そして、中小企業のITエンジニアは総務、経理などの共通部門に所属することになりますが、従事している業務内容は他の社員とは大きく異なります。
中小企業にとって、ITエンジニアは「便利屋」?
中小企業のITエンジニアは、一人またはごく少数で、ITに係るあらゆる業務に携わることになります。良く言えば「マルチプレーヤー」、悪く言えば「便利屋」であり、なんらかの専門に特化することが多い大企業とは対照的です。
例えば、中長期的にITを使った生産性向上の計画を練ったり、現行業務の中でITを使った付加価値向上の機会を探すなど、企画型の業務を行うこともあるでしょう。その一方でプリンタが紙詰まりを起こせば、自らフタを開けて紙を取り除き、再稼働させなければなりません。社内LANの接続が中断すれば、配線に不備はないかを調べるため、自らデスクの下を這いずりまわらなければならないのです。
中小企業の社内エンジニアはどう評価すればいい?
特定のプロジェクトを遂行するために期間限定でITエンジニアを雇用する場合と、期間を定めずに雇用する場合では、その評価の方針は異なります。では、それぞれどのような方針で評価すればよいのでしょうか。期間限定雇用の場合
期間限定雇用の場合は、コンサルティング会社、ITベンダー、個人事業主といった社外のITエンジニアを活用する場合と同様に評価します。すなわち、雇用する時に「何をしてほしいか」を期日とともに明確にし、できる限り数値化した目標を設定しましょう。それをどれだけ達成したかが、ほぼ唯一の評価ポイントになります。
無期雇用の場合
無期雇用の場合は、社内のあらゆるIT業務を遂行してもらうために雇用するもので、業務内容を列挙して達成目標を明確にすることは困難です。また、事業の進展によりIT業務の内容は変化します。予期せぬトラブルへの対応を迫られることもあるでしょう。
この場合、ITエンジニアの持っている技能ではなく、そのエンジニアが社内のIT関連業務にどれだけ役立ったかを総合的に評価します。ITを使う社員に、ITエンジニアにいつ何をしてもらって、どのように役立ったかをヒアリングしましょう。ITエンジニアに対して感じている不満も併せて聞き出します。一方で、評価対象のITエンジニアにも、IT業務において改善された点など、具体的に目に見える成果をヒアリングします。そして、この2つを突き合わせて評価するのです。
中小企業の社内エンジニアを評価するポイントは?
前章で「無期雇用のITエンジニアを評価する場合、IT利用者と評価対象者本人にヒアリングをすべき」とご説明しました。それでは、実際に両者にヒアリングする際は、どのようなことをチェック・評価すべきなのでしょうか。その項目を具体的に見ていきましょう。自分の専門性を主張していないか
中小企業のITエンジニアは、社内のITに係るあらゆる業務に対応しなければなりません。そのため、IT利用者から質問やトラブル対応の依頼を受けても「この件は自分の専門外なのでわかりません」と言うことはできません。このような態度は、長年同じ種類のIT業務を行ってきたITエンジニアに時折みられますが、中小企業では許されないのです。
常に解決策を示しているか
すべての依頼に対して、ITエンジニアが自ら対応するのは不可能です。自らが対応できない場合は、ベンダーを呼ぶ、代替案を提案するなどの解決策を示さねばなりません。それと同時に、解決までにどれくらいの期間を要するのかも明確に伝える必要があります。「すぐには直せませんが、あとX日うちにはベンダーにきてもらって直してもらいます」「XXシステムから顧客向け提案書が出力できなくなりました。直るまでは、YY機能を使ってデータをダウンロードし、Excelで作ってください」といったことをIT利用者に明確に伝えられているかが重要です。そして、IT利用者がその解決策に満足しているかも大きな評価ポイントです。
成果を具体的に指し示せるか
ITエンジニアに、一定期間における仕事の成果を聞き出す際は、「ITシステムの機能向上や新規機能の導入は成果にならない」という点に注意しましょう。なぜなら、ITシステム機能の向上や導入は、手段であって目的ではないからです。「社内のXXさんが業務に要する時間を週にXX時間短縮できた」「これまで顧客に求められながら渡せなかったWWWを出せるようになった」といった具体的な成果を、定量的に示せるか評価しましょう。
ITの目標を評価の軸にしましょう
ITエンジニアで評価すべきなのは、技能ではなく、そのエンジニアが中小企業のIT関連業務にどれだけ役立ったかです。そのため、評価する管理職や経営者がITに通じている必要はありません。ただし、社内のITが果たすべき目標を明確にして、これを評価の軸にしなければいけません。
ITの目標とは、「複数のサービスラインで顧客情報を共有し、クロスセルを増やす」「すべての案件の設計図を共有し、再利用を図ることにより、設計作業を効率化する」など、ITシステムごとに、個別に設定するものです。
これが明確になっていれば、ITエンジニアへの不満が出ても、それが正当なものか、IT利用者のわがままなのかが明らかになります。これは、ITエンジニアに対する評価の透明性を高めるということです。特殊な業務を行っているために孤立するおそれのあるエンジニアが、他の社員と良好な関係を築き、モチベーションを高くすることにつながるのです。
専門家紹介
三林英毅
専門分野
□ IT導入・活用支援
□ 内部統制、コンプライアンス
□ 管理会計
自己紹介
これまで、① ITベンダー、② ユーザー企業のIT担当者、③エンドユーザー、④ 第三者のコンサルタント の4つの立場で、ITシステムの導入から運用までの実務に従事してきました。お客様がITシステムを活用して、効率的な業務を行い、事業を拡大発展させるお手伝いをします。アドバイスだけではなく、設計書、業務フロー、手順書などをお客様とともに作成し、 長期的に経営管理業務を担っていける人材の育成も行います。
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