人事・労務管理

人材採用

2020/3/3

中小企業に必要なIT人材

[中小企業に必要なIT人材]トップ画像

中小企業がIT人材を求める場合、IT専門部署を設けられる大企業とは、求められるIT人材の要件は異なります。ここでは、IT専任者がいない中小企業が、生産性向上のために、ITノウハウを持った人材を獲得しようとする時に留意すべきことを、独立コンサルタントの三林英毅氏が解説します。

中小企業からのよくある質問

事業が順調に成長し、社員数も増えてきました。IT活用で生産性を上げるために、ITに詳しい人材を雇いたいと考えています。どんな人材を選べばよいのでしょうか?

この質問に回答する専門家

三林英毅さん画像

三林英毅

大手SI会社、監査法人系コンサルティング会社、生命保険会社にてエンジニア、コンサルタントとして多くのプロジェクトに従事。証券会社系総合シンクタンクにて内部管理、財務・経理の業務を行い2015年に独立。

目次

見出しアイコン中小企業に必要なITノウハウとは

ITそのものの提供を事業の中核としている場合を除いて、IT活用の第一の目的は生産性向上です。一方、人件費の制約などで、ITノウハウを持った人材の採用や育成は難しいことが多いのが現状です。そこで、中小企業がIT人材を獲得するためには、求めるノウハウを絞り込むとともに、候補対象の間口を広げる必要があります。まずは、具体的に必要なITノウハウを、重要な順に挙げます。

●自社の業務を理解し、IT活用機会をみつける

中小企業のIT人材に第一に必要なノウハウは技術的な知識ではなく、

1.自社の業務をすばやく理解する能力
2.ITを使って業務を効率化し、付加価値向上の機会をみつける能力

の2つです。

中小企業がIT導入するためには、何をITシステムにやらせるかを明確にし、文書化する必要があります。パッケージシステムを導入する場合も、作りこむ場合もこれが大前提で、IT人材が自ら行わなければなりません。

●ITベンダーの提案を評価できる

ITベンダーは、提案の際に自分たちの自慢したいところを強調します。また、売上を増やすために、当該中小企業には過大と知りつつも、高機能なITシステムを薦めることがあります。しかし、ベンダー自慢の機能が中小企業にとって必要とは限りません。IT人材は、ITシステムの各機能を自社がどのように使うか、あるいは使えないかを見定めなければなりません。

●経営者の視点でIT化要否を判断できる

コストをかければかけるほど高機能なITシステムは手に入りますが、かけられるコストには限りがあります。そのため、ITシステム導入によって削減できる業務量と、生み出される付加価値を金額換算し、コスト対効果を評価する必要があります。最終判断は経営者が行うことになりますが、IT人材の助言は重要です。

見出しアイコン中小企業に必要なIT人材の望ましい経歴

では、中小企業にとって必要なノウハウを持っているIT人材の経歴はどのようなものでしょうか。IT人材を選ぶ際に見るべきポイントをいくつかご紹介します。

●ITベンダーでの、中小企業向けのIT導入の経験

中小企業向けのIT導入の経験があると、中小企業のIT人材がつきあう相手の手の内がわかるという点で役に立ちます。ただし、営業担当者や管理者としての経験ではなく、中小企業のエンドユーザーと直に接して、開発や導入作業を行った経験です。

●コンサルティング会社などでユーザー側に立ったIT導入サポートの経験

他の中小企業、とりわけ、同業他社でIT業務を担った実績があればベストですが、
人手不足のうえIT人材が逼迫している昨今では難しいでしょう。これに代替できるのは、第三者として中小企業のエンドユーザーを代理して、ITベンダーと対峙し、IT導入に携わった経験です。

●エンドユーザーとしてITシステムを使って業務を行った経験

ITベンダーの提案を評価するためには、ITシステムの仕様書、操作マニュアル、画面のデモを見て、そのシステムで何がどこまでできるかをすばやく理解する能力が必要です。これは開発、導入の作業経験に加えて、ユーザーとしてITシステムを使って業務を行った経験によって養われます。この経験は、自社の現行業務の中からIT活用機会をみつけるためにも役立ちます。ITを使った「業務カン」とでもいうべきものです。

見出しアイコン「中小企業に必要なIT人材だ」と誤解してしまう例

次に、中小企業に必要なITノウハウと見誤ってしまう経歴、資質をご紹介します。以下は、ないよりはあったほうがよい、できないよりはできたほうがよいですが、中小企業がIT人材を選ぶ基準としての重要度は低いものです。

●パソコンなどのIT機器を自在に操れる

パソコンのパワーポイントなどのソフトを使って顧客向けの美しい提案資料を作れる、また、プリンタが紙詰まりを起こした時にすばやく修復できる人は、ITに詳しい人のように見えるでしょう。しかし、こうしたノウハウは少しばかりの訓練と経験を積めば素人でも得られます。

●有名IT会社で長年、大規模システム開発に従事した実績

一度に大勢のIT人材を動員するような大規模なシステム開発(例えば、メガバンクの統合案件)における実績は、中小企業ではあまり役に立ちません。なぜなら、こうした案件では、導入しようとしているITシステムの一部分にしか携われませんが、中小企業では、ITシステムの全体を把握し、会社全体のIT活用を推進しなければならないからです。

●特定技術の高いレベルのノウハウ

中小企業が自ら、プログラミング、データベース、通信などの高度な技術を直に使うことはあまりありません。ITベンダーが作るITシステムを通して間接的に使います。したがって、中小企業のIT人材にとって高度な技術を使いこなせる技は必須ではありません。

●最近はやりのIT用語を口にする

「カスタマーサクセス」「グロースハック」「CRM」など、マスメディアやネットによく出ているIT用語を口にする人は、最新のITに通じている人に見えがちですが、そうとは限りません。
IT業界は自社の製品を売るためのキャッチーな用語を次々に生み出し、マスメディアを使って世の中に流布させることを長年行ってきました。しかし、中小企業に必要なのは抽象概念やキャッチコピーではなく、実際に生産性を向上させてくれるITシステムです。

見出しアイコンIT人材の賢い獲得方法

かけられる人件費に制約があり、IT特化のキャリアパスを用意できない中小企業は、IT人材の使い方を柔軟にする必要があります。

●かならずしもフルタイム雇用である必要はない

中小企業では、ITに係る業務が日常的に発生することは少ないです。もちろん、新たにITシステムを導入する時、機能追加を行う時にはIT人材がフルタイムで勤務している必要があります。ただ、ITシステムを使った業務運営が軌道に乗れば、常勤している必要はありません。したがって、週2日あるいは3日の勤務や、IT導入時などに限った有期雇用を検討しましょう。

●他の業務と兼務してもらう

他の業務と兼務できるIT人材をフルタイム雇用することも考えられます。ITを主業務としつつ、IT業務がない時には他の仕事をしてもらうということです。エンドユーザー経験のあるIT人材は兼務ができる可能性が高いです。

●雇用せず業務委託もあり

フルタイム勤務である必要がないのであれば、雇用ではなく、対象業務を限定した委託契約をすることも検討しましょう。仕事の引き合いが多いIT人材は、フルタイム勤務や雇用されることにこだわりません。引き合いが多いということは、そのノウハウが見かけ倒しではなく、真に価値あるものである可能性が高いといえます。

また、今後ますます多くの企業が副業を認めるようになると、他企業のIT人材を時間限定の委託契約で活用できるようになります。

見出しアイコンIT人材を獲得できるチャンスは増える

人手不足が喧伝される昨今ですが、同時に人材の流動化も徐々に進みつつあります。労働市場で仕事を求めるITプロフェッショナルは今後増えていくでしょう。中小企業に必要なITノウハウを絞り込み、正規雇用の求職者以外にも対象を広げれば、人件費に制約のある中小企業が自社に必要なIT人材を獲得できるチャンスは大きくなります。

専門家紹介


三林英毅さん画像

三林英毅

専門分野

□ IT導入・活用支援

□ 内部統制、コンプライアンス

□ 管理会計

自己紹介

これまで、① ITベンダー、② ユーザー企業のIT担当者、③エンドユーザー、④ 第三者のコンサルタント の4つの立場で、ITシステムの導入から運用までの実務に従事してきました。お客様がITシステムを活用して、効率的な業務を行い、事業を拡大発展させるお手伝いをします。アドバイスだけではなく、設計書、業務フロー、手順書などをお客様とともに作成し、 長期的に経営管理業務を担っていける人材の育成も行います。

・この専門家の他の記事をみる

・このカテゴリーの他の記事をみる

Engunのメールマガジンに登録する
Engunの冊子をダウンロードする

Introductionご案内

Engunの専門家に質問する