生産管理
2019/11/18
中小企業にもできる品切れ、過剰在庫を防ぐ生産計画のつくり方
中小企業においても、適切な在庫管理をするためにきちんとデータを分析したうえで生産計画をつくることが重要になります。
品切れや過剰在庫が防げる生産計画のつくり方について、専門家である(株)石川改善技術研究所の石川雅道氏が解説します。
中小企業からのよくある質問
商品の在庫が膨らみやすく、また品種によっては欠品も生じています。しっかりした生産計画をつくるために良い方法はありますでしょうか。
この質問に回答する専門家
株式会社 石川改善技術研究所
代表取締役
石川 雅道
家電メーカーにてデバイス・半導体の生産ライン企画、設計、立ち上げなど行いながら、生産性向上を目的とした改善活動も担当。「グローバルよりローカルに」「集中より分散」とものづくり現場を鼓舞するエンジニア。
目次
在庫を抱えることによって発生する諸問題
昨今は需要予測が難しい個人の嗜好が多様化し、売れ筋を予測し難い状況が続いています。
お客様の需要が気まぐれに変わることで生産計画の立て方が難しくなり、生産計画の変更に日々追われているという現場担当者の嘆く声を聞いたことがあります。
一方で経営者が「欠品を起さなければもっと利益を上げられたのに」と歯ぎしりするも、会社が所有する倉庫には、いつともなく出荷を待つ多数の在庫があるという有様です。
在庫が持つリスク
在庫は、経営に大きく影響します。過去には、工場の操業度を落とさないようにと、先を見込んで生産した企業もありました。しかし、お客様からの注文がなければ、悲しい状況が待つだけです。
生産した製品が売れ残って販売できないと分かると、在庫の評価金額を下げる必要があり、不良償却費用として表面化します。大量の在庫を持つと、材料の先食い、保管費用、金利等の発生に繋がり、資金繰りの悪化を招きます。
なぜ過剰な在庫や欠品が生じるか
在庫を持つ理由として、一般的に以下のような項目が挙げられます。
・お客様が希望する納期に間に合うように、余裕をもって生産した
・販売の機会損失を防ぐために、在庫を持って引き当てることとした
・工場の能力を超える需要情報があるので、前倒しで生産した
・まとめ発注するお客様に応えるために在庫を持つ
欠品が発生する理由としては、「需要変化に慌てて投入計画を変更することで現場が混乱し、必要な材料が不足で生産できない」とか、「工程の仕掛りが増加して必要なタイミングで供給できない」などが考えられます。
お客様が無理な要求をしてくるからと、愚痴っていても何も解決しません。そこで求められるのが、お客様の出荷要求を分析することです。
データ分析して生産計画を考えよう
出荷のバラツキを分析する
売れ筋商品の出荷量のバラツキを見えるようにしましょう。
上図は、出荷平均値の数倍もの「まとめ出荷」があった例を図示しています。
一年に一度あるかないかの大量出荷を懸念して、在庫を用意していませんか。
大量発注の原因を営業に調べてもらうと、例えば、お客様の特売が予定されていたといった特別な理由があります。工業製品の類いは、お客様が増産するような時でしょう。増産も特売もお客様は準備が必要ですから、事前に情報として得られます。
出荷データを分析する
上図のように過去3ヶ月分から半年の全出荷データを分析してみましょう。月平均の出荷数量を縦軸にし、横軸は製品を数量の多い順に並べます。
季節変動や特別な需要を除くと、毎日出荷する売れ筋製品が、種類は少ないものの全数量の7割前後を占めるでしょう。
ついで全数量の2割ぐらいを占めるのが週単位で1~2回出荷する多品種少量と呼ばれる製品群です。残りの1割は月の中で僅かな出荷しかない製品という具合に分類されるでしょう。
これがPQ分析と呼ばれる方法です。
量に応じた生産計画
売れ筋製品は、毎日平均化して生産が可能となります。いわゆる平準化生産と呼ばれるものです。
日々の出荷量のバラツキが多少あったにしても、生産するロットの数量を一定にします。材料も低在庫に抑えられ、工程の仕掛りも少なくできますので、顧客の急な要求にも対応がしやすくなります。
週単位程度の出荷も、生産するロット数量を一定にします。予め設定在庫を決めておき、決めた在庫量以下になったら生産を指示する仕組みをつくってください。
上図のように日当たりの出荷数と製造のリードタイムから在庫数を決めます。これを補充生産方式と呼びます。生産ロット、生産指示数量は、シミュレーションして検証します。
ひと月に生産があるかないかの少量出荷製品は、生産計画を立てて生産する対象とします。営業には、お客様の注文を受けてからの生産着手ということを予め伝えてもらいましょう。
前述したような「まとめ出荷」の要望に対してはお客様の事前計画をキャッチし、生産の負荷が平準化できるように何日間かに分けて前倒し生産とします。
生産計画の担当者は正常な状態での時間を極力削減し、異常時の管理に細心の注意と時間を掛けることが重要です。
リードタイムを縮めよう
生産計画の基本になるのは、投入から完成までのリードタイムです。
リードタイム短縮が、在庫削減のファーストステップとなります。完成品の在庫削減から着手するのはやめましょう。お客様に迷惑を掛けることになりかねません。自分達の力量で、できるところから始めてください。
工程ごとに置く仕掛り削減や、工程の部分的な連結で仕掛りを置くストアの数を減らすことから始めましょう。
工場内の流れを適宜分岐したり、統合したりして、流れを阻害する原因となっている工程の管理方法の見直しや、モノの流れが円滑になるような工夫(整流化と呼ばれます)が必要です。
リードタイムを縮めることで現場の生産性や納期順守率も大きく向上します。
繁盛する回転寿司店に学ぶ
繁盛している回転寿司店を観察して下さい。
眼の前を回る寿司は設定在庫です。お客様の入り具合を見ながら、設定在庫を決めています。
回る寿司がなければ、お客様の食欲が湧かないでしょう。お客様は自分の食べたいものは、都度注文します。注文に応えられるように、素早い握り方が必要です。リードタイムが短いのです。
材料のネタは日々の販売状況から適正な量を仕入れています。これによって、売れ残って廃棄する商品は少なくなります。参考にすべきビジネスと思いますが如何でしょう。
専門家紹介
株式会社 石川改善技術研究所
代表取締役
石川 雅道
専門分野
□ ものづくり 生産管理(現場改善、在庫削減、ヒューマンエラー対策、設備改善など)
自己紹介
1951年秋田県生まれ。家電メーカーにてデバイス・半導体の生産ライン企画、設計、立ち上げなど行いながら、生産性向上を目的とした改善活動も担当。国内外の設備技術者にIEや安価で小型の設備である「からくり」教育を行う。2009年に創業し、ミラサポ専門家派遣者などモノづくり支援で現在に至る。
「グローバルよりローカルに」「集中より分散」と今時の流行に抗う考え方でものづくり現場を鼓舞するエンジニア。
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