マーケティング
2020/1/9
中小企業が新商品を開発する際に、考えるべき商品戦略のつくり方
商品が市場にあふれ、商品の品質や機能において差別化が難しくなってきている昨今、商品戦略の策定は難しい状況に直面しています。
そんな中、新商品を開発する際に、中小企業の強みを活かし新しい競争軸を確立することで「脱コモディティー化」を図ることが可能となります。
今回は、中小企業が新商品を開発する際に考えるべき商品戦略のつくり方について、専門家の株式会社フォルム 工藤浩志氏がお答えします。
中小企業からのよくある質問
今のビジネスでは成長が見込めないので新しいマーケットに向けた商品を開発したいのですが、どうすればよいでしょうか?
この質問に回答する専門家
株式会社フォルム
代表取締役
工藤 浩志
システム・インテグレーション会社および大手外資系コンサルティング・ファームを経て、2017年6月株式会社フォルムを設立し、大小複数の会社のコンサルティングに従事。
目次
商品開発をどのように進めていますか?
商品開発には様々なアプローチがあります。まずは、それぞれのアプローチ方法がどういったものなのかを押さえておきましょう。
提供側の発想による商品開発アプローチ
商品開発において、提供側は商品のことを何よりも誇りに思い、それがいかにすばらしいかと、ついつい考えてしまう傾向にあります。
しかし、「当社の商品は優れているはずなのになかなか売れない」といった声も…。
自社商品の強みや機能にこだわることは重要です。しかし、提供側からの一方的な発想での商品開発は「当たるも八卦、当たらぬも八卦」。リスクの高い商品開発アプローチになりがちです。
買い手が必要とするものを提供する商品開発アプローチ
一方で「うちはどうしても技術屋発想だから駄目だね。もっとお客さまのことを知ったうえで商品開発を行うべき」という発想もあります。
それにより、市場や購買者という買い手の立場に立って、買い手が必要とするものを提供しようとする商品開発アプローチをとることも少なくありません。
しかし、「様々な市場調査を通して消費者やお客さまの意見や声を聞き、商品開発に活かしてみたが、思ったほど売れない」といった声も…。
お客さまは、必ずしも自分が欲しいものを明確に知っているわけではありません。お客さまに欲しいものを聞くだけで売れる商品を開発することはできないのです。
自社の根幹ともいえる商品企画開発を「本気で」消費者にゆだねるというのは、ある種の思考放棄のように思えてなりません。
商品が市場にあふれた現在、何を頼りにすればよいのか
前述したように、商品が市場にあふれ、その品質や機能において差別化が難しくなってきています。しかも、価格で差別化を図り、その商品の価値が著しく下落してしまうこともあります。
消費者にとっては一見有難いことですが、ある線を超えたときに成長速度を下降させる要因となってしまいます。
今後、中小企業の商品開発に求められるのはコモディティ化に対応した商品創りといえるでしょう
脱コモディティー化を図るための発想、商品戦略
白物家電やパソコン、衣類、食品など、低コストで製造された商品が市場にあふれ、多くの企業が低価格競争に陥っています。このような状況を脱するには「脱コモディティー化」を図ることが重要になります。そして、商品の機能や価格以外の部分で差別化を図り、新しい競争軸を確立することでその商品はコモディティ化から逃れることができるようになります。
重要なのは、自社の商品が「選ばれる」こと
大事なことは、「他社ではなく、当社の商品・サービスを選んでいただくこと」です。それが実現されるのであれば、商品開発の起点(きっかけ)が、市場のニーズにあろうと、自社の強みや技術にあろうと、大きな問題にはなりません。
自社の商品を選んでもらうための違いをどこに見出すか
商品開発はマーケット(市場)を頭に入れて行うことが必要になります。それは、新しいマーケットを開拓していくことが中小企業の商品開発にとって重要だからです。
新しいマーケットを創造、開拓する目的は中小企業の業態によって様々ですが、「社会利益」「経済メリット」「環境保全」などを考慮した商品開発が望まれます。
そして、他の商品と差別化を図り、ある一定の商品価値を維持する商品開発を進めていくことになります。
新しいマーケットに向けた商品戦略の進め方
顧客に選ばれる商品開発をするためには、商品開発だけにとどまらず、自社商品がお客さまに選ばれるためのマーケットを創り上げていく必要があります。そして、次のような観点から、お客さまに提供する商品の特徴や価値を定めていくことになります。
・自社商品の強みはなにか?
・どのようなお客さまに商品を届けたいのか?
・そのお客さまへどのような喜びを提供したいのか?
新しいマーケットを創造、開拓するためには、商品の特徴や強みだけでなく、顧客のニーズ、社会的なニーズをとらえること、つまりマーケットを頭に入れた商品開発アプローチが重要になります。
中小企業の強みを活かした商品戦略
このアプローチは、中小企業ならではの強みを活かした商品戦略といえます。大企業は、分業および関連部門との調整に手間取り、迅速に商品戦略を回すことがなかなか困難です。そして、経営者自らがこのアプローチに直接関与したり、意思決定を下すことは稀なのです。 中小企業のフットワークの柔軟さと経営者の迅速な意思決定により、大企業との差別化を図ることが可能になるでしょう。
新しいマーケットに向けた商品開発は3つのステップで乗り越えよう!
Step1. 商品開発と連動し、マーケットを開拓する
自社の事業そのものの持続性を考えて、「社会利益」「経済メリット」「環境保全」などの観点から、バランスを取りながら商品がマーケットに浸透していくための理由づけ(背景)を描きます。 そして、開発された商品はサステナブル(持続可能)商品として、お客さまからお墨付きが与えられる準備を整えるステップになります。
Step2. 商品の特徴、提供価値を明確にする
自社が考える強みとなる商品の特徴や機能と、商品を提供することによるお客さまの喜び、そしてお客さまにとっての価値を明確にとらえます。
「どのようなお客様」の、「どのような喜び」を「どのような強み」によって追求するのか、このことについて「考える」ステップになります。
Step3. 経営者による確固たる「意思決定」
Step2を行うのは、経営者以外でも構いません。 しかし、経営者は開発対象の新商品に関する商品戦略を理解し、確固たる「意思決定」を下さなければなりません。スローガンとしてではなく、適切に意思決定しておくことが重要になります。同時に、商品開発の方向性を定めたうえで、社内の関係者間でコンセンサスが得られていることも肝要です。
商品開発は「マーケットを開拓する」ことが重要
中小企業が新商品を開発する際に考えるべき商品戦略のつくり方として、商品を売る場であるマーケットを「開拓する」ことが重要になります。
マーケットという考え方は非常に重要で、商品を売る際の基本となるものです。
自社がアプローチすべき市場と、磨くべき商品の強み、そしてお客さまへもたらす価値を同時に考えることで、自社の商品が「選ばれる」ことになります。
本アプローチは活字で読むと難しく感じてしまうかもしれません。しかし、商品戦略の参照モデルや、思考の枠組み(フレームワーク)を活用することで、短時間で考えを整理することが可能となります。
新商品に限らず、既存商品に関しても、商品戦略の振り返りをお勧めします。
専門家紹介
株式会社フォルム
代表取締役
工藤 浩志
専門分野
□ ビジネス・ITコンサルティング
□ マーケティング・コンサルティング
自己紹介
システム・インテグレーション会社および大手外資系コンサルティング・ファームを経て、超上流工程の要件開発方法論を確立。2008年12月、「ITコンサルタントのための要件開発入門」(技術評 論社)を出版。要件開発方法論に基づいたサービス・サイエンスおよびコミュニケーション戦略フレームワークの確立と推進を目指す。 2017年6月株式会社フォルムを設立し、大小複数の会社のコンサルティングに従事。
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