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2020/5/16

新商品開発をしているものの本当に売れるか不安。 中小企業でもできる、「売れる」可能性を高めるための取り組みとは?

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売れる商品と売れない商品の違い。誰もが気になるテーマだと思います。今回は、数多くの新商品開発の現場に携わってきた福元が、売れる商品と売れない商品の違いを、詳しく語ります。

中小企業からのよくある質問

新商品開発を進めているのですが、この商品が本当に売れるものなのかどうか、不安があります。本当に売れる新商品を開発するための進め方やコツはありますか?

この質問に回答する専門家

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かたちなす

代表

福元 和弘

大型雑貨店で35年間勤務、DIY用品から生活雑貨、文具、ホビークラフト用品まで幅広く携わる。「現場主義、お客様もスタッフも楽しむ」をモットーに品揃え、仕入れ販売、売り場づくり、店舗運営従事。

目次

見出しアイコン製品に「違い」を創り出すことが、売れる商品をつくる大原則

「違い」で売れている商品
「永久交換保証の靴下」
安全靴の利用者に向けた商品。従来の靴下は、耐久性が低く、数回はくだけで穴が開いてしまうという問題点を抱えていた。その点に着目したのが、この商品。通常の靴下の30倍以上の頑丈さを実現することで、ほかの商品との違いを創出。「永久交換保障の靴下」として売り出したところ、売り上げが急拡大するに至った。

「切り口が直線美のテープカッター」
仕事でテープカッターを日々使う利用者に向けた商品。利用者からの「テープの切り口がギザギザなのがイヤ、見た目が気に入らない、ホコリが付きやすい、剥がすときにテープが縦に裂ける」という声から美しさに着目。直線美を感じる刃に、シンプルなデザインを施し、他商品に比べて圧倒的に美しい商品を実現。こだわり派に支持される。

「違い」とは何か?
よく勘違いする方が多いのですが、ここでいう違いとは、商品そのものや、技術ではありません。ここで言う違いとは、製品の核となる利便性のことを指します。別の言い方をすれば、製品を手に取る消費者にとって魅力と感じてもらえること(心理的な使用価値)です。 例えば、上記の例で言えば靴下は、「一生履き続けられる(靴下)」だったり、カッターは「仕上がりが美しいと思える(カッター)」。商品の値段や、製品特徴、ブランドなどではなく、それを通じて得られる価値に着目しましょう。

見出しアイコン「違い」を生み出すファーストステップ

強みから「違い」を生み出す
違いが必要だとわかっても、どのように違いをつくればよいかわからないもの。そんな時に着目してほしいのが、製品の「強み」。強みを磨くことで、「違い」は生まれます。違いを生み出すために、まずは「強み」の特定から行いましょう。

強みを特定する2つのフレームワーク
強みの特定に向けて、最も活用しやすいのが、SWOTとVRIOというフレームワーク。詳細はネットで検索すると情報が数多く掲載されていますので、合わせてご覧になるとよいと思います。

<SWOTとは?>
事業の評価をするために、自社のリソースを内部分析(「強み」と「弱み」)、外部環境(「脅威」と「機会」)の視点で分析するフレームです。このフレームを活用し、自社の強みを明確化、開発する商品の方向性を導き出します。

<VRIOとは?>
自社の持つ経営資源(技術やノウハウ、アイデアなど)に対して4つの問いかけを行い強みをより明確にするフレームです。

参考)VRIOの4つの問いかけ
「価値」(Value):自社の商品価値が外部環境で通用するか
「希少性」(Rarity):競争企業が持っていない特定の価値を有しているか
「模倣可能性」(Imitability):簡単に真似されないか
「組織」(Organization) :素早く商品化できる組織か

フレームワークで強みを特定した事例
靴下づくりのメーカーの事例を使いながら少し詳細に説明します。
まず、SWOTを使い、大まかに強みを抽出します。今回は、以下のようにまとめました。

「脅威」:海外の安い靴下が大量に輸入され、大量販売で対抗しても利益が確保できない。
「機会」:ものを大切に、地球環境に優しいものづくりをしようというニーズが高まった。
「弱み」:国内生産でコスト的に価格で勝負できない、作り手に支払う工賃がままならない。
「強み」:耐久性の高い品質の良い靴下をつくる技術力がある。

SWOTの結果をみると、「強み」(耐久性の高い靴下をつくる技術力)が、「機会」(ものを大切にしようというニーズ)に活かせると感じるようになりました。そこで、耐久性の高い靴下が作れることを強みに検討を進めました。

次に、VRIOの観点から「耐久性の高い靴下」という強みに対して、4つの視点から問いかけました。

「価値」:耐久性の高い製品を求めている人達のニーズにに見合う製品を作れる。
「希少性」:(摩耗テストの結果で得た)通常の30倍の耐久性はほかの商品に見ないレベル。
「模倣可能性」:永久保証というサポートをつくることで、マネできない商品にできる。
「組織」:小回りのきく中小企業だから、即時の商品化が目指せる。

VRIOを行った結果、耐久性の高い靴下は、十分強みになると判断しました。

見出しアイコン「違い」を強化するセカンドステップ

強みが決まったら、冒頭でお話した心理的な使用価値について考え、違いを強化していきます。その際に重要のなのは、誰にとって使用価値があるのか?つまり、ターゲットを明確にすることです。

強みから想像できるターゲットを洗い出す
上記で導き出した強みから可能性あるターゲットを想定していきます。ひとりのターゲットに固執するのではなく、様々なターゲットを設定しては、実際の使用シーンを想定します。ターゲットに近い人もしくは自身で実際に使ってみて、強みは使用価値に感じてもらえるか試すとよいです。

ターゲットを設定するコツ
例えば、夏の季節に向けて薄手のソックスを開発するに当たり「30代〜40代のビジネスマン」をターゲットと絞ったとします。ですがこの状態だと、その人の姿をイメージすることは難しいです。そこで、イメージを膨らませるために、以下のような情報を想定しさらに詳しく絞り込んで、その人物(ターゲット)を具体化します。

・その人物の属性について:性別、年齢、職業・役職、家族構成、年収など
・その人物のパーソナリティについて:価値観、性格など
・その人物のライフスタイルについて:休日の過ごし方などどのような生活をしているか


例えば、年齢40歳・男性、外回りの多い営業職の課長、家族3人、年収は500万円と設定。 次にパーソナリティやライフスタイルは、家族を大切にして休日に料理を振る舞う、ものにこだわりがあり気に入ったものを大切に長く使う、自分で靴を磨いたりアイロンも自分でかけるなど。
ターゲットを明確化すると、その人にとっての使用価値も考えやすくなるはずです。

強み×ターゲットで、違いを明確に
ここまでで、強みとターゲットが明確になりました。そこで、最後に行うのが、ターゲットに刺さるように、違いの言語化すること。例えば、冒頭で紹介した靴下で行けば、耐久性の高い靴下ではなく、一生破れない靴下(→これが後々製品サポートと相まって、「永久保証の靴下」と変わっていきます)。といった具合にターゲットが魅力を感じるレベルにもっていきます。簡単な言葉で(商品説明)で、魅力を感じてもらえることが非常に重要です。

見出しアイコン商品を開発する際に、私が大事にしていること

少し本題からはそれますが、前述の内容に加え、私が大事にしていることがあります。それを最後にお伝えし、今回の記事の締めとさせてください。

地球環境へ配慮する
つい最近、事務所の断捨離を断行しました。古いパソコンやディスプレイの処分はメーカーがリサイクルで引き取ってもらいましたが、プリンターは破棄しました。リサイクルの対象になっていなかったことと、新商品の安さと性能を考えると購入の方が得だと感じたからです。捨てながら、後ろめたい気持ちになりました。地球環境の破壊が加速する今だからこそ、より一層、人や自然に優しく資源が上手く循環できる物づくりを意識したいですね。

廃棄物への着目が一つのヒント
廃棄物に地球環境に配慮した商品づくりのヒントがあると感じています。先日、支援企業で「母の日のギフトに向けてラッピング無料サービス」を検討した時の話ですが、私自身ギフトでもらった時に感じていた「いつも立派な包装資材だが捨てるに忍びない」と思いながら捨てていたことを思い出し、包装資材を捨てずに再利用することを併せて提案していくことになりました。目の付け所を変えるだけで、無駄だったものも価値が生まれます。商品開発に携わるものとして、この点もぜひ意識したいところです。

専門家紹介


福元 和弘さん画像

かたちなす

代表

福元 和弘

専門分野

□ 中小企業支援(地場産業、伝統工芸品、地方の埋もれた商品)

□ 商品開発、販促支援、販路開拓(主に生活雑貨や文具、手づくり関連用品)

自己紹介

10万点以上扱う大型雑貨店で35年間、仕入れや販売・ワークショップなどを、いろいろな分野で経験をしてきました。(アウトドア、サイクル、DIY、クラフト、文具、インテリア、ハウスウエアなど)
その経験が実生活や趣味に繋がり、さらに資格取得や大会参加へと発展しました。今で言う「ワークライフバランス」を長年実践していたようです。「モノが好き、道具が大好き」で楽しく仕事と生活をしてきた結果が、今日に結びつきました。

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