人事・労務管理

働き方改革

2020/5/16

コロナ対策に!中小企業がテレワークの運用を成功させる方策

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新型コロナウイルス感染症による非常事態宣言が発出され、企業もオフィス出勤者最低7割減を強く求められています。そのため、多くの企業でテレワークの導入が始まりましたが、特に中小企業では、どう運用すればいいか悩んでいる企業が多い現状です。
今回は、中小企業の上手なテレワークの運用方法についてオフィス ア ライト代表の杉山達郎氏が解説します。

中小企業からのよくある質問

新型コロナウイルス感染症対策として、国の指示に従い、出勤者を減らしテレワークを開始したものの、どう進めていけばいいのかわかりません。具体的な運用方法を教えてください。

この質問に回答する専門家

杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

慶応義塾大学卒業後、株式会社ニコン入社。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組み、現在は「労使がわかる社会保険労務士」と中小企業経営者の支援をしている。

目次

見出しアイコン新型コロナウイルス感染症で始めるテレワーク

今回、新型コロナウイルス感染症対策として、国の要請を受けたため、また従業員の健康を守るために、急遽テレワークを導入・開始した企業も多いと思います。本来であれば、制度を事前に検討・準備し、一部門でトライアルを行い、全社に展開するという進め方であるべきです。ただ、今回は即実施しなければならない状況になり、その運用方法に悩んでいるという声も多く聞きます。そもそもテレワークとは、いったいどのようなものでしょうか?

テレワークとは?
テレワークの「テレ」は「離れたところで」を意味する言葉です。つまりテレワークとは、「離れたところで働く」ということになります。通常、オフィスという同一の空間で働くのに対し、テレワークは社員が離れたところで働くので、それゆえのメリットや課題が存在します。

テレワークの種類
テレワークには、以下の3種類があります。
1.在宅型テレワーク:自宅で仕事をする
2.サテライト型テレワーク:自社の他事業所、共同利用型オフィス等で仕事をする
3.モバイル型テレワーク:顧客先・訪問先・喫茶店・ホテル等で仕事をする
今回は、国が要請している外出自粛・通勤削減のための在宅型テレワークを中心に解説します。

見出しアイコンテレワークのメリットとは?

東京都労働局の「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)結果報告書」(詳細はこちら)を見ると、テレワークの導入には、今回のような「非常時の事業継続への対応」に加え、次のようなメリットも考えられています。

ワークライフバランスの向上
テレワークにより通勤時間や移動時間がなくなるため、より時間を有効に活用することができます。また、育児や介護のため一時的に仕事を離れることも可能となり、仕事との両立ができるようになります。

生産性向上
テレワーク導入の過程で業務プロセスを見直すことにより、生産性向上が期待できます。例えば、会社にいると電話や来客などで集中できない場合もありますが、自宅で仕事をすることで作業効率が上がり、生産性向上につながります。

優秀な人材の雇用確保
テレワークにより、育児・介護との両立が可能になり、離職による人材流出を防ぐことができます。また、近年では求職者の会社に求める条件として「働きやすさ」が重視されており、採用における大きなメリットになります。

オフィスコスト等の削減
テレワーク導入により、オフィススペースの縮小やオフィスの冷暖房、照明などのコスト、また通勤費などの削減が可能となります。

見出しアイコンテレワークの課題とその対応について

前章ではテレワークのメリットをご説明しましたが、一方で、テレワークにおける運用面での課題もあります。特に、今回は十分な準備期間がなく、テレワークをスタートさせた企業も多いでしょう。以下の課題について、今からでもしっかりと対応していくことが求められます。

時間管理
今回は否応なくテレワークをスタートしているケースが大多数と思いますが、これまでテレワークを躊躇する企業の多くは、「時間管理ができない」という理由を挙げていました。たしかに、見えない場所にいると仕事をさぼるのでは?という心配があるかもしれません。ただ、見える場所にいれば社員や業務を必ず管理できる、と言えるのでしょうか?

実際、オフィスにいても働いているふりはできます。PCに向かって眉間にしわを寄せていても、実は二日酔いで気持ちが悪いだけ、なんて笑い話もあります。
もちろん人事管理上の時間管理は必要ですが、本来管理すべきは仕事の内容やその進捗のはずです。すなわち、時間管理は性善説に立って、出退勤・休憩時間などの管理をPCやスマホ等で行うことができれば十分なのです。

人事評価
「テレワークの社員をどう評価するのか?会社にいないと仕事ぶりが分からず、評価できない」という不安も耳にします。
しかし、今一度考えてみると、オフィスにいると何を評価できて、いないと何が評価できないのでしょうか?一所懸命な様子でしょうか?朝早く来て夜遅くまで働いている姿でしょうか?

評価とは、成果でなされるものです。従業員が目標を達成できたかどうか、そのプロセスにどのようなことがあったかを評価することが、本来の人事評価です。
今回を機に、何をどのように管理し評価するのか考え、正しい評価ができるように取り組むべきです。

コミュニケーション不足
「会社」という同じ空間にいないと、上司や同僚との情報共有に不安があるという声も多くあります。
ただ、現時点では出社もままなりませんから、オンラインテレビ会議ツールやチャットツールなどを使用せざるを得ません。そのため、毎朝の業務連絡やチームミーティングなどを定期的に開催し、従来以上に情報の共有を意識して取り組むべきです。カメラを使い、お互いの様子を確認することも良いでしょう。
コミュニケーションは、重要ではありますが、同じ空間にいなくてもとることができるものです。積極的にコミュニケーションをとる機会を作りましょう。

見出しアイコンテレワークをするうえで、今日から取り組むべきことは?

重複しますが、新型コロナウイルス感染症の影響で、十分に準備をできずテレワークをスタートさせた企業は多くあります。ここでは、そのような場合に取り組むべきこと、気を付けるべきことについて解説します。

継続してテレワークを運用する
準備がないままテレワークを始めたことで、運用ルールが十分整備されていないことも想定されます。ただし、今回はそれでもテレワークを実施することが求められています。 まずは非常事態と認識し、トライアルという考え方でも構いませんので、継続して運用しましょう。その上で、不十分な点などを従業員からヒアリングし、それらをもとに改善を図るとよいでしょう。

テレワークで対応可能・不可能な業務を分ける
接客や製造など、その現場にいないとできない仕事があることは事実です。だからといって、全員出社させることが公平だという考えを持つべきではありません。
今は、テレワーク可能な社員だけでも実施することが重要です。そして、テレワークできない社員が抱える業務のうち、テレワークで対応できるものがあれば、それをテレワーク可能な社員に移行することです。それにより、会社に出社する時間が減って、時差・短時間勤務が容易になり、出勤日数を減らすことも可能となります。

ペーパーレス化を進める
「書類は紙ベース、かつ印鑑決済の業務フローだから、テレワークができない」という声もあります。たしかに、これまでの書類を、一気にデジタルファイル化することは現状困難でしょう。そうであれば、これまでの書類はそのままにして、今日からデジタルファイル化によるペーパーレスを実施しましょう。
また、どうしても過去の書類が必要な場合は、その分だけを出社している社員にデジタル化し送ってもらうなどして、対応しましょう。

オンライン上でのつながりを深める
会社という共通空間にいないと、孤独感を感じることがあります。ましてこのような時期だと、不安が募ることもあるでしょう。そのため、物理的に一緒でなくても、会社の仲間とつながっているという意識を醸成することが重要です。例えば、チャットで雑談ができる場をつくる、就業後にオンライン飲み会を行うなども、不安を減らし孤独感を和らげるうえで有効な手段です。

見出しアイコンこの機会に、テレワークを浸透させましょう

本来、テレワークは会社と従業員双方に大きなメリットがあるものです。今回は、新型コロナウイルス感染症のために、準備もなくスタートせざるを得なかったかもしれません。ただ、これをチャンスと捉え、この機会にしっかりと効果をあげられるテレワークに育てていきましょう。そうすれば、この新型コロナウイルス感染症が終息した時に、企業体質がもう一段強化され、従業員の働きやすさも向上しているはずです。
新型コロナウイルス感染症が終息し、通常の企業活動に戻ることのできる日が一日も早くやってくることを願っています。

専門家紹介


杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

専門分野

□ 人事・賃金制度の設計・構築、運用改善

□ 働き方改革制度導入・運用提案

□ 人事労務を中心とした経営管理支援

自己紹介

慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社ニコン入社。グループ会社である株式会社那須ニコン代表取締役、株式会社ニコン・エシロール執行役員生産企画ゼネラルマネジャー、オプトス株式会社取締役経営管理部長などを歴任。30代には、会社を休職しニコン労働組合中央執行委員長も担当。現在はニコンを早期退職し、オフィス ア ライト代表へ。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組んできました。その経験を基に、現在は「労使がわかる社会保険労務士」として中小企業経営者の支援をしている。

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