情報化・IT活用

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2020/1/9

中小企業がITシステムを導入する際、失敗しないベンダーの選び方

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IT導入にあたって、「社内にIT専門家がいないので、何をどうしたらよいのかわからない」というのは、多くの中小企業が抱える悩みです。IT導入によって労働生産性を向上させるには、専門家不在を補ってくれる優れたベンダーの選定が不可欠です。 今回は、長年、事業会社とITベンダー双方で、IT導入と活用の実務に携わってきた独立コンサルタント三林英毅氏が、ベンダー選定を行うにあたっての最重要ポイントをご紹介します。

中小企業からのよくある質問

IT導入を進めたいのですが、ベンダーがたくさんあり、どこを選べばよいかわかりません。失敗しないための選び方や、見るべきポイントがあれば、教えてほしいです。

この質問に回答する専門家

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三林英毅

大手SI会社、監査法人系コンサルティング会社、生命保険会社にてエンジニア、コンサルタントとして多くのプロジェクトに従事。証券会社系総合シンクタンクにて内部管理、財務・経理の業務を行い2015年に独立。

目次

見出しアイコンなぜ中小企業はIT導入に失敗するか

導入したITシステムの品質が期待に反して使い物にならなかった、という例は中小企業のIT導入に関してはごく稀です。一方で、ITシステムの一部の機能だけが利用され、大部分は使われないままになっているという話はよく聞きます。では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

ITシステムが自社の業務に適合していないことに気づかないまま導入してしまった
業界で評判の良かったITシステムを導入し、実際に使い始めてから、データ項目や処理手順が自社の業務の進め方と異なっていることが判明した、というケースがあります。その場合、従業員は業務をITシステムに合わせるのではなく、従来からのやり方を続けてしまうことがあります。

ベンダーから十分なサポートが受けられない
ITシステムを導入後、期待したように動かないと、ITに不慣れな中小企業の従業員はベンダーのサポート窓口に電話します。その際、ITシステムで何をしたいのかを話しますが、サポート担当者はわかってくれず、話が噛み合わないということが起こります。やがてその従業員は「ITシステムを使いこなせないなら、従来からのやり方で業務を続ければよい」と考えるようになってしまうのです。

見出しアイコンベンダーを選ぶ前に、ITにやらせたいことを特定する

中小企業がベンダーを使いこなすためには、自社の課題を把握し、その解決のためにITシステムに何をやらせたいのかを明確にしておく必要があります。

ITの知識がなくてもできる
ITがわからないから、と難しく考えることはありません。どんなITシステムを導入して、どんな効果を得たいかだけを考えればよいのです。実現可能性を考慮する必要はありません。できるかできないかは、ベンダーに教えてもらえばよいのです。

ITにやらせたいことの具体例
*見込み顧客リストで作成したデータをそのまま使って、契約後の顧客管理もやりたい
*ひとりの顧客ごとに複数案件を管理したい
*入力した案件の完了日の順に並んだ案件リストが欲しい
*営業担当者ごとに担当している案件の進捗状況を一覧化したい
*商品の納品日、検収日、入金日の予定と実績を対比したい

見出しアイコンIT導入にあたってのベンダーとの関わり方

では、ITの専門家がいない中小企業がIT導入に失敗しないようにするためには、どのようにベンダーと付き合えばよいのでしょうか。まずは、ベンダー側から中小企業を見てみましょう。

中小企業はベンダーからどのように見えているか
ベンダーからすると、導入するITシステムが一社専用でない限り、各ユーザーに対しあまり手間をかけたくないというのが本音です。なぜなら、中小企業一社あたりの売上金額が小さいからです。対応の丁寧さ、親切さはベンダーによって異なりますが、ITシステムの基本機能でカバーされない中小企業の個別のニーズへの対応は、追加料金が必要になることが一般的です。

ベンダーに一任してはいけない
中小企業は、ITの専門家であるベンダーにすべてお任せしたいと考えがちです。しかし、ベンダーは自社提供のITシステムを中心にビジネスをしています。よって、自社のニーズに適合したITを導入するためには、ベンダーに丸投げするのではなく、中小企業が自社のニーズに応じてベンダーを使うという意識で臨む必要があります。

見出しアイコンIT導入にあたってベンダーを選ぶ具体的な基準

ITにやらせたいこと」の可否を明確に答えてくれるか
こちらがITシステムにやらせたいことをベンダーに伝えた時に、「できます」「条件付きでできます」「できません」のいずれかを明確に答えてくれるかどうか、ということが重要です。ベンダーの営業担当者は受注したいがために、できないことでも曖昧な表現を使って「できそうだ」と匂わせることがよくあります。しかし中小企業の側としては、IT導入にあたって何ができて何ができないかを明確にする必要があります。

したがって、「できません」をはっきり言ってくれるベンダー、また、「条件付きでできます」の場合に、その条件を追加コストも含めて具体的に示してくれるベンダーは誠実度、信用度が高いといえます。

IT導入時および導入後のサポートが受けられるか
ITシステム導入時には、必ずベンダーから操作マニュアルが提供されます。その現物を見せてもらい、わかりやすさを確認しましょう。
また、ベンダーがITシステムを使う担当者のために講習会を開催してくれるか否かということも重要です。講習会の回数、時間、参加可能人数が十分かどうかを確認しましょう。ベンダーの担当者が来社して、実際に業務で使う端末を用いて教えてくれるのがベストです。

そのほか、何か困ったことがあったら助けてもらえるかどうかも要確認ポイントです。ほとんどのベンダーは、電話、メール、チャットでのサポート窓口を設け、操作やトラブル対応の方法などを説明してくれます。対応窓口の営業時間、問い合わせた場合の応答時間がどれくらいかを確認しておきましょう。

IT導入コストは効果に見合うか
コスト削減や収益増の見込み額に比べて、IT導入に要するコストが過大にならないようにするのは、他の投資と同様です。
ここでは、ITシステムにやらせたいことを全て実現する、ということにこだわり過ぎないよう注意しましょう。
基本機能ではカバーされない個別ニーズへの対応は、ベンダーが人手をかけて行います。その人件費により、追加料金は基本料金に比べて相当に割高になることが多いです。追加料金に見合わない部分は諦める必要があります。

Excelなど既存ソフトとの連携が可能か
導入しようとしているITシステムが、自社のニーズに部分的に対応していない場合は、Excelなど既に使っているパソコンソフトにデータをダウンロードして、従来通りに業務を行ったほうがよいでしょう。最近のITシステムのほとんどはデータダウンロード機能を備えています。ダウンロードできるデータ項目をベンダーに示してもらい、その項目が現状使っているパソコンソフト上のものに近いほどベターです。

ベンダーの担当者をどう見るか
提案に来てくれたベンダーの担当者が、「どんなITシステムをお望みですか?何を作ればいいですか?」ではなく「ITシステムで何をしたいのですか?」ときいてくれた場合、そのベンダーは、比較的中小企業のニーズに寄り添ってくれると判断することができます。

見出しアイコンITベンダーを賢く使いこなす

近年、クラウド化などの技術進歩により、中小企業の限られた予算では手の届かなかったITシステムが安価に、かつ手軽に利用できるようになっています。
ITシステムの種類によって、ベンダーの選び方の詳細は少しずつ異なってきますが、ここでご紹介した基準はいずれの種類にも共通します。IT導入時だけでなく導入後の段階においても、ベンダーを賢く使いこなせば、コスト削減、省力化による人手不足対応などの課題の克服につながります。

専門家紹介


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三林英毅

専門分野

□ IT導入・活用支援

□ 内部統制、コンプライアンス

□ 管理会計

自己紹介

これまで、① ITベンダー、② ユーザー企業のIT担当者、③エンドユーザー、④ 第三者のコンサルタント の4つの立場で、ITシステムの導入から運用までの実務に従事してきました。お客様がITシステムを活用して、効率的な業務を行い、事業を拡大発展させるお手伝いをします。アドバイスだけではなく、設計書、業務フロー、手順書などをお客様とともに作成し、 長期的に経営管理業務を担っていける人材の育成も行います。

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