情報化・IT活用

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2019/11/18

攻めのペーパーレス化は、中小企業の生産性向上の切り札

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少子高齢化や人手不足、働き方改革などの荒波を中小企業が乗り切るには、ペーパーレス化による生産性向上がおすすめです。「生産性向上に取り組みたいが、どこから手を付けたらよいか分からない」、「有効な対策が見つからない」といった中小企業経営者からのご相談も増えています。
今回は生産性向上とペーパーレス化について、ITとマーケティングのスペシャリストきさたに経営法務事務所代表の木佐谷康氏がお答えします。

中小企業からのよくある質問

生産性向上とよく言われますが、どこから手を付ければよいのか分かりません。中小企業にとっては、大企業のように予算や人的リソースもないので、大掛かりな設備やITツールを導入することも難しいです。低予算で実現できる生産性向上策を教えてください。

この質問に回答する専門家

木佐谷 康さん画像

きさたに経営法務事務所

代表

木佐谷 康

登録25年以上に及ぶIT業界でのマーケティング、新規立ち上げの実績とジャスダック上場企業役員としてのマネジメント経験をベースに、IT利活用とマーケティング分野を中心に支援している。

目次

見出しアイコンなぜ今ペーパーレス化なのか!?

少子高齢化に伴う人手不足、働き方改革による残業時間の削減など、中小企業を取り巻く環境は、年々厳しくなっています。厳しい環境の中でも毎年利益をあげ、成長して生き残っていかなければなりません。
そこで注目されているのが生産性向上です。少ない従業員と短くなる労働時間の中でアウトプットを増やすには、知恵と工夫が必要です。
今回は、中小企業の生産性向上の切り札となるペーパーレス化について、分かりやすくご紹介します。

中小企業を取り巻く現状
2019年版「中小企業白書」によると、“有効求人倍率は、足下では約45年ぶりの高水準、新規求人倍率は過去最高水準で推移している”と指摘されています。
特に、「500人以上の事業所の場合、右肩上がりで年々雇用者数を増加させている一方、29人以下の事業所は右肩下がりで推移」していることからも、中小企業の深刻な人手不足がうかがえます。
一方、日本の労働生産性については、”OECD加盟諸国36か国中21位であり、首位のアイルランドのおよそ半分程度の水準””労働生産性上昇率については36か国中29位と低い水準”となっており、人手不足を補うためにも労働生産性の向上が強く求められています。

紙があることの弊害
では、生産性向上にはどう取り組めばよいでしょうか?
設備やシステムの導入となると、かなりの費用がかかるケースが多く、資金不足に悩む中小企業にとってはなかなか採用できません。そこでおすすめなのが、ペーパーレス化を利用した生産性向上です。
保管スペースが必要、検索性が悪い、持ち運びが大変といった「紙」があることの様々な弊害をペーパーレス化で一気に解消でき、生産性向上も実現できるのです。

会社にとってのメリット
ペーパーレス化のメリットは、印刷コストや保管スペースの削減といった、直接的なものだけではありません。
攻めのペーパーレス化に取り組めば、生産性向上による効率アップ、従業員のモチベーション向上など、間接的な効果も期待できます。
また、自宅や外出先でも働けるテレワークを導入した中小企業では、人材採用にも効果があったという事例もあります。

従業員にとってのメリット
ペーパーレス化は会社だけでなく、従業員にとっても大きなメリットがあります。
資料を取りに会社に戻らなくてもよい、報告や交通費精算などが外出先でも可能になるなど、働きやすい環境でワークライフバランスが実現できます。

見出しアイコンどうやって進めたらよいか

ペーパーレス化を過去に取り組んだが、うまくいかなかったという声もよくお聞きします。 中小企業の場合は、大企業のように旗振り役を設けることができず、ルールを決めてもすぐに元に戻ってしまったという失敗例もあります。
攻めのペーパーレス化を実現するためには、ITの利活用が必須です。最近、デジタル技術を活用してイノベーションを起こす「デジタルトランスフォーメーション(DX)」というキーワードがよく使われますが、中小企業でもITを賢く活用して変革を起こしましょう。

IT利活用は避けて通れない!
ITというと、おカネがかかるというイメージをお持ちの方も多いですが、最近では無料で使えるクラウドツールも数多く出ており、ハードルがかなり低くなっています。
また、クラウドというとセキュリティが不安とおっしゃる経営者の方もいますが、政府機関や大手金融機関もクラウドを積極的に利用しており、しっかりと対策がとられたクラウドであれば、全く心配はありません。

ペーパーレス化の進め方
なぜクラウドの活用がペーパーレス化につながるかというと、クラウドはいつでもどこからでもアクセスできるので、紙に印刷する必要がなくなるからです。
外出先から社内にある資料を確認でき、伝票を書く必要もなくなるので、どこでも社内と同じように仕事ができます。
人間は便利な手段を選択する傾向があるので、環境さえ整えれば、自然とペーパーレス化が進んでいきます。

専門家おすすめツール① クラウドストレージ
ペーパーレス化の際に最初に検討したいのが、クラウドストレージです。
社内やデータセンターにあるファイルサーバがクラウド上にあるイメージです。
DropboxやBoxなどの専業ベンダーやマイクロソフトのOnedrive、GoogleのGoogle Driveなどが有名です。容量制限はありますが、無料で使えるツールも多いので気軽に試してみましょう。

専門家おすすめツール② デジタルメモ
アイデアやちょっとしたことをメモする際も、クラウドツールが使えます。
デジタルメモにすれば、PCだけでなくスマホやタブレットでも見ることができ、キーワードで簡単に検索できます。
筆者は、議事録やメモのほかに、メールニュースやWebサイトなども保存して、セミナー原稿や提案書を作る際にキーワードで検索して利用しています。EvernoteやマイクロソフトのOneNoteなどが代表的です。

見出しアイコンペーパーレス化最前線

書類やメモのほかにも、社内には膨大な紙があります。最近では、法改正などにより請求書や契約書といった重要書類もデジタル化できるようになっています。
さらに一歩進んで、社内の様々な紙資料をデジタル化してみましょう。

名刺:デジタル化が進んでいる紙資料の一つ
紙に書かれている文字をデジタル化する技術であるOCRの普及によって、デジタル化が進んでいる紙資料の一つが名刺です。
名刺を持ち運ぶ手間が省けるだけでなく、社内で名刺情報を共有することもできます。
Sansan社が提供している個人向けのeightと法人向けのSansanが有名ですが、Lineの名刺管理アプリmyBridgeやWantedlyなどもあります。

稟議書:管理職の外出が多い企業におすすめ
管理職の外出が多く、稟議決裁や経費精算に時間がかかるという企業におすすめなのが、稟議書のデジタル化です。
複数部署、複数の管理職が決裁する必要がある場合は、ワークフローと呼ばれるツールが必要ですが、経費精算等の簡易的な決裁で済むような場合は、クラウドストレージに書類を置くだけでも対応できます。

領収書:法改正によりスマホで撮った写真も保存可能に
どこの企業でも必ず保存が必要な紙書類が領収書や請求書です。
平成28年の電子帳簿保存法の改正で、従来はスキャナという専用装置が必要だった読取にスマホで撮影した写真も利用できるようになりました。クラウド会計ソフトと組み合わせれば、領収書をスマホで撮影して登録すれば、自動で仕訳も起こしてくれます。

契約書
最近徐々に導入が広がっているのが、契約書のデジタル化です。
ペーパーレス化や契約の効率化だけでなく、デジタル化すると印紙が不要になるため、建設業やプラントなど、高額の契約が多い業界では、大幅なコスト削減効果も期待できます。

見出しアイコン攻めのペーパーレス化にチャレンジ

攻めのペーパーレス化のイメージは湧きましたでしょうか?
攻めのペーパーレス化とは、コストやスペースの削減にとどまらず、働き方改革やワークライフバランスの実現に結びつけることで、生産性やモチベーションを上げようという考え方です。
労働人口の減少は、すべての中小企業が避けて通れない道ですので、攻めのペーパーレス化で荒波を乗り切りましょう。

専門家紹介


木佐谷 康さん画像

きさたに経営法務事務所

代表

木佐谷 康

専門分野

□ おカネのかからないIT利活用

□ 中小企業でも取り組めるマーケティング・販促

□ 補助金・助成金の活用と資金調達

□ 成功確率の上がる事業戦略・事業計画策定

自己紹介

25年以上に及ぶIT業界でのマーケティング、新規立ち上げの実績とジャスダック上場企業役員としてのマネジメント経験をベースに、IT利活用とマーケティング分野を中心に支援しています。モットーは、「おカネのかからない」「中小企業でも活用できる」を重視した伴走型支援です。
生まれ:1961年、在住: 東京都中野区、趣味:スポーツ観戦

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