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2020/5/16

中小企業が、既存事業から展開するEC販売を成功させるポイント

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今やEC販売は日本の基幹産業です。メルカリなどのフリマアプリが話題ですが、EC販売を事業の新たな柱に成長させた企業も少なくありません。中小企業にとって、EC販売は少ない投資で展開できる、チャンスの大きな事業なのです。
今回はEC販売事業についてよくある質問に、中小企業のマーケティングやITに詳しいKAN経営企画代表の漢那宗丈氏がお答えします。

中小企業からのよくある質問

既存事業を、ネットを活用したEC販売で展開したいと考えているのですが、成功するために必要なことを教えてください。

この質問に回答する専門家

漢那 宗丈さん画像

KAN経営企画

代表

中小企業診断士

漢那 宗丈

大手総合電機メーカーのIT部門で事業企画・製品企画・マーケティングに従事すると共に、組織設計・改革に参画。経営コンサルタントとして独立後は中小企業の事業計画やマーケティング・組織改革などを支援。

目次

見出しアイコン今や大市場の「EC販売」に乗り出そう

参考:経済産業省「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査) 報告書」※一部加工しています(詳細はこちら

EC市場は、企業が一般消費者向けに展開するBtoC分野だけでも18兆円規模に達し、大きな成長を続けています。主婦も利用するフリマアプリや、Amazon、楽天などが注目されていますが、多くの企業にとって重要な事業分野になっています。一方で、EC化率はまだ低く、大きく成長する可能性を秘めた市場であり、参入のチャンスといえます。

企業がEC市場に参入すべき理由
日本の市場は人口減少により、大きな成長を望めません。そのような状況で事業の拡大を考えると、新しい販売チャネルの獲得が有力な施策です。しかし、成長が鈍く競合も多い日本市場では、新しい取引先の確保は至難です。新店舗を作るとしても、投資金額は大きく、良い条件の場所もなかなか見つかりません。そのような中で、EC販売は投資金額も小さく、日本全国や世界を対象とする新しい販売チャネルと成り得るのです。

EC販売の分野はどのようなものがある?
BtoC分野のEC販売は、物販系とサービス系が中心で、他に有料音楽動画配信などのデジタル系があります。サービス系はネット予約などの旅行が中心で、それ以外は飲食や美容などの予約であり、デジタル系と共に新規販売チャネル獲得の位置付けではありません。

参考:経済産業省「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査) 報告書」※一部加工しています

EC販売がリスク回避策にも
新型コロナウイルスの影響で、飲食や小売りなどの業種は大きな打撃を受けています。そんな中で、いち早くEC販売に参入した企業は全面休止を免れています。デリバリー業者と連携して出前サービスを展開するレストランは、EC販売の売上を大きく伸ばしています。自然災害を含め、今後もこのような危機の到来が予想されます。従来と異なる販売チャネルを持つことは、有効なリスク回避策になるのです。

見出しアイコンEC事業も既存事業も基本は同じ

Amazonや楽天を利用すると、主婦でも簡単にEC販売に参入が可能で、ちょっとした小遣い稼ぎをしている人は少なくありません。しかし、EC販売も仕入れ、在庫管理など、従来の事業と同じ”しくみ”が必要です。既存事業の延長でEC販売に参入する場合は、既存事業の”しくみ”がそのまま使えるのです。ここでは、EC事業に必要となる”しくみ”についてご説明します。

既存事業の”しくみ”を使おう
EC事業の規模が大きくなると、既存事業と同レベルの”しくみ”が必要となります。製造業でも小売業でも、仕入れや在庫管理、販売管理など物販の基本の部分は、既存事業の”しくみ”にEC販売を乗せることができます。ゼロからEC販売事業を立ち上げる企業が苦労するところですが、既存事業のベースがある場合は、EC販売独特な部分に注力すればいいのです。多くの中小企業にとってもハードルは高くありません。

EC販売に特有な”しくみ”を立ち上げよう
EC販売をするには、既存事業のベースとは別に、ネット上で販売する”しくみ”が必要です。Amazonや楽天などのショッピングモールに出店するか、独自のサイト(ホームページ)を構築するかを選択します。その他に、宅配業者を決め契約する、発送用の箱・袋・緩衝材などを準備する、販売条件や返品規定を準備するなど、EC販売独特の準備が必要です。既存事業の延長なら、発送用の梱包を同じにするなど、培ってきたブランド力の活用が可能です。

事業計画を作ろう
EC事業は、既存事業と同じ商品の販売であっても、対象顧客も販売チャネルも異なる「別のビジネス」です。そのため、ターゲット顧客の特定、サイトの内容や宣伝広告などの販売戦略、販売額・収益・投資回収などの事業数値計画などを作りましょう。これをベースにPCDAサイクルを回すことで、成功へ導くことができるのです。更に、新事業の立ち上げなので、これを後継者候補に任せることで、有効な育成教育にすることもできます。

見出しアイコンEC販売する商品の特性を考えよう

「EC販売ならどんな商品でも成功する」という訳ではありません。一方で、商品の見せ方やアピールの方法によって、成功する商品に変身する場合もあります。以下の事例などを参考に、まずは自社の商品がEC販売に向いているか、またどのようなアピールをすれば良いかを考えましょう。

EC販売で成功する商品と、その事例
EC販売で成功するのは、消費者の感性に訴えることのできる商品です。例えば、デパートの企画催事にも出店する家庭用のブラシ製造業者は、高品質と使い心地の良さで消費者に支持され、現在ではEC販売が卸業者への販売を上回っています。このように差別化できる商品があるならベストですが、売り方で差別化する事例もあります。とある子供用品の販売業者は、販売のコンセプトを孫へのプレゼントとして、祖父母の感性に訴えるサイトを作りました。結果、ご家族の状況に合わせて相応しい商品を提案するなどのサービスで成功しています。

差別化が難しい商品のEC販売
Amazonや楽天には、安価で買える「差別化が難しい商品」が多くあります。これらの多くは小商いで終わっていますが、出店コストが低いため、既存事業の+αと考えれば参入の価値は十分あります。また、このような商品の事業を継続・拡大させるには、消費者の感性に訴えるような付加価値の高い商品へシフトすることが必要です。参入によってEC販売のノウハウを蓄積すると共に、感性に訴える商品開発のアイディアを得るチャンスとすることもできます。

見出しアイコンEC販売を成功させるポイント

消費者の感性に訴える商品や売り方を決めたら、EC販売の事業に乗り出しましょう。EC販売を成功させるうえで最も重要なのは、独自サイトの構築と運営です。その具体的なポイントについて、詳しくご説明します。
なお、先述のようにサービス系・デジタル系は新規販売チャネル獲得の位置付けではないため、今回は物販系のEC販売を中心にご紹介します。

独自サイト構築のポイント
EC販売で成功している企業の多くは、Amazonや楽天などへの出店ではなく、独自サイトを運営しています。独自サイトで特に重要なのは、魅力的なサイトかどうかです。例えば、北欧の家具や雑貨のEC販売サイトは、北欧の生活を紹介し、従業員が北欧気分で実際に使った感想などを、楽しい読み物として提供します。そのように、思いの籠ったサイトでお客様の支持を集めているのです。

サイトを構築・運営する際は、それらをサポートしてくれるベンダーを、パートナー企業として使うのが一般的です。
パートナー企業とは、商品や売り方に対するポリシーを明確に持って対峙しましょう。パートナー企業は技術面を含めて提案してくれますが、その商品や売り方のプロではありません。主体的に判断し、思いの籠ったサイト構築と運営をしてください。

成功する運営のポイント
EC販売は、お客様にサイトを訪問してもらうだけでなく、サイトの内容を見て購買意欲を持ち、購入へ進んでもらわなければなりません。そのためにはSEO対策や、サイトを訪れるアクセスの分析、リスティングなどネット広告などが必要です。これらはネット環境ビジネスのプロであるパートナー企業の意見を聞き、自身で納得して進めましょう。
もうひとつ重要なのは、ネット上の口コミです。サイトにも意見を投稿できるようにすると共に、ブログやSNSでの情報発信も有効です。

既存事業との相乗効果を生むポイント
既存事業から展開する大きな強みは、相乗効果です。先述の家庭用ブラシ製造業者のEC販売サイトでは、全国の商品取扱店と実店舗だけで販売する商品を共に紹介しています。これによって実店舗の集客を上げ、アンテナショップとして使うことで、口コミ効果や商品戦略に活用しています。

見出しアイコン事業の幅を広げるEC事業

差別化できる商品を持つ企業にとって、EC販売は海外展開の有力な手段にもなります。販売代理店を設けなくても、現地の流通企業と組めば、コントロールしやすい販売チャネルを構築できます。東南アジアなどで、日本の高い付加価値の商品を求める市場が、今後大きく成長するはずです。

一方、企業間取引のBtoBのEC国内市場規模は既に344兆円です。従来の取引をEC化して処理効率を上げたものがほとんどですが、BtoCのEC販売のように、ネット上で工作機械などを選んで買うような市場も既に立ち上がっています。
最早EC販売は、事業の幅を広げるために避けては通れないものなのです。

専門家紹介


漢那 宗丈さん画像

KAN経営企画

代表

中小企業診断士

漢那 宗丈

専門分野

□ 事業企画 ・・・ 経営分析、市場分析、ビジネスモデル構築、売上損益計画    など

□ 新製品開発 ・・・ 市場性調査、競合分析、ターゲット市場選定、製品仕様策定  など

□ マーケティング ・・・ デビュー戦略、販売チャネル戦略、広告宣伝戦略     など

□ 補助金取得活用 ・・・ 製造業から医療関係まで支援実績多数

□ IT導入 ・・・ 導入予定の業務分析、ITシステム仕様策定、ITベンダー選定 など

自己紹介

信州大学工学部大学院終了後、日立製作所のIT部門に勤務。10年間コンピューターハードウェアの開発設計に従事し、その後は一貫して事業企画・製品企画に所属して、事業計画や製品企画、マーケティングに従事すると共に、組織設計・改革にも参画。退職後に経営コンサルタントとして独立し、中小企業の事業計画、マーケティング、IT導入、組織改革などに加えて商店街振興などを幅広く支援。
KAN経営企画ホームページ  https://mkanna.wixsite.com/kanna

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