経営企画・戦略立案

経営企画・戦略立案

2020/5/16

中小企業が取り組むべき、社内新規事業。その進め方や計画の立て方・ポイントとは?

[中小企業が取り組むべき、社内新規事業。その進め方や計画の立て方・ポイントとは?]トップ画像

「このままで成長を続けられるのだろうか」
「そもそもあの事業をやりたかった」
など様々な思いを抱く中小企業経営者の方々にとって、新規事業展開は創業以来の挑戦ですよね。ただし、創業時と異なり既成の事業との関係も考慮する必要があります。今回は、中小企業診断士の西川邦広氏が、新規事業へ挑戦される中小企業経営者に向けて、社内新規事業成功のヒントを紹介します。

中小企業からのよくある質問

社内新規事業を立ち上げようとしているのですが、その進め方や計画の立て方、ポイントなどあれば知りたいです。

この質問に回答する専門家

西川 邦広さん画像

中小企業診断士

西川 邦広

東京外国語大学卒業。ゼネコン勤務後、証券会社で海外駐在を含む31年間に、経営企画、企業再生、リスク/内部管理、介護施設運営他に関与。財閥系ゼネコンの社外取締役歴任。中小企業診断士。

目次

見出しアイコン新規事業は成長への挑戦

目の前の課題に取り組むだけで精一杯、という中小企業経営者の方は多いと思います。 また、かねてより抱いていた事業への夢を実現できず、忸怩たる思いを募らせている中小企業経営者もいます。みなさんは新規事業への挑戦についてどうお考えですか?

新規事業は企業の持続的成長に不可欠
経営者の方々は、継続的な成長を目指して起業されたと思います。
ただ、一般的に事業は、生まれてから撤退するまで「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4段階に分けられます(=プロダクト・ライフサイクル)。すなわち、大半の事業はいずれ市場から撤退するのです。最近はこのサイクルが短くなっているため、新規事業導入は持続的成長に不可欠なのです。

新規事業導入をためらっている理由は?
新規事業導入をためらっている方は、事業環境の変化に気付かなかったり、変化に目を背けてはいませんか。
少子高齢化、海外製品の参入、一方で従業員の高齢化、人員確保の困難化など、内外環境の変化に追いつけなくなっている中小企業は少なくありません。
ITが業界の壁を壊し、瞬く間に新参者が現れ、かつてない製品やサービスを提供し始めています。顧客の価値観も多様化しています。変化に積極的に挑戦していかないと、置いていかれてしまいます。

チャレンジ精神を持って、新規事業に挑戦を
経営者の方は、夢や理想をもって起業されたと思います。何かしらの理由で本来目指していた事業には取り組めなかった経営者の中には、「いつしか夢を実現したい」という方もいるでしょう。
既存の事業が成熟した今、具体化するタイミングです。再度チャレンジ精神を発揮しましょう。

見出しアイコン「新規事業失敗」の芽を摘み取ろう

「新規事業に挑戦したいが、自社でも取り組めるのだろうか。」
「失敗するとすべてを失いかねない。」
と多くの中小企業経営者が悩んでいると思います。実際に、新規事業の取り組みの成功率は30%前後といわれています。
ここでは、新規事業が上手くいかない主な理由を挙げます。これまでの経験を活かし、失敗の芽をあらかじめ摘み取っておきましょう。 

新規事業へのノウハウがない
新規事業へのノウハウや人材がないと、製品やサービスの開発に苦労し、時間と資金を空費することになってしまいます。
また、開発途上で法務や税務などの課題に直面し、開発自体が頓挫することになるかもしれません。自社の強みや経営資源は把握しておきましょう。

顧客のニーズに合致していない
顧客のニーズや市場予測を読み違えていると、失敗に繋がります。
読み違える原因の一つとして、既存事業での成功体験が妨げとなり、市場環境を客観的に見ることができていないことが挙げられます。成功体験が過信につながり、顧客の声に素直に応じられていないのです。
見込みの誤りを受け入れ、柔軟な対応を心がけましょう。

意思決定がタイムリーにできない
新しい事を始める時は、常に社内から反対の声が上がります。
既存の組織で取り組んだり、意思決定者の存在が不明だと、新規事業の構想自体が立ち行かなくなります。市場のニーズを捉えた事業でも、時機を逸すると瞬く間に陳腐化の憂き目にあいます。
特定の人がリーダーシップを発揮できる環境づくりや、目標時期の設定をしましょう。

見出しアイコン新規事業立ち上げの戦略とは?

新規事業は、収益間口の拡大、衰退事業の代替、新規顧客の開拓などを通じ、収益基盤の強化に繋がります。
また、中小企業白書によれば、新規事業に成功した企業の51.4%は経常利益率が増加しています。すなわち、財務体質の強化にもなるのです。以下を参考に、新規事業を成功へと導くための戦略を検討しましょう。

新規事業展開のパターン
一般に新規事業展開の形態は4パターンに大別されます(下図参照)。

市場開拓:“新”市場で“既存”製品等を展開する戦略。
→新たな販路を見出す。
製品開発:“既存”市場で“新”製品等を展開する戦略。
→“既存”顧客を対象に、“既存”製品に新機能を加えたり、“新”製品等を開発する。 
多角化:“既存”事業を維持しつつ、“新”市場で“新”製品等を展開する戦略。 →新分野で成長を図り、リスクは比較的高い。
事業転換:“既存”の事業を縮小/廃止しつつ、“新”市場で“新”製品等を展開する戦略。
→多角化戦略よりもリスクが高い場合が多い。

アプローチを考えよう
新規事業の展開パターンが分かったら、自社のアプローチを考えます。成功率を高めるには、自社の強みを活かす方がよいでしょう。
市場開拓であれば、既存製品等の特徴を見直すべきでしょう。製品開発なら、ノウハウや保有施設などを活用し、既存顧客のニーズを汲み取る必要があります。また、多角化や事業転換は、中小企業とってハードルが高いです。未知の市場へ向け、限られた経営資源を分散させることになります。現行事業の市場が縮小、あるいは代替による市場の消滅などの場合に検討する戦略となります。

参入市場を知ろう
アプローチを考えたあとは、展開パターンに関わらず対象市場を知ることが大事です。
また、顧客を通じたニーズに加え、成長への見通しを立てることも必要です。成長性が高い市場へは新規参入者が相次ぐため、競合他社とは異なる特長(優位性)を有した製品等を提供することが一層必要になります。そのほかに、ニッチ市場で独自の地位を確保することや、柔軟性を活かして早期に市場参入し、シェアを取ることも有効です。

見出しアイコン新規事業の成功率を高めよう

新規事業導入において、「事業を起こす」という点では起業時に採った考え方と異なりません。しかし、起業時とは違い、現在の社内の経営資源(組織、取引先を含む)を無視できません。今や社長1人ではなく、関係者の理解や協力が必要となるからです。新規事業の成功率を高めるには、以下の点を心がけましょう。

事業計画を立てよう
新規事業の成否を検討し、事業案を実行していくためには、やはり事業計画は不可欠です。収益化プロセスの設定、人員の配置、資金繰りなど計画化しましょう。 市場の見通し、競合の状況、自社の経営資源を整理して、確実に実行に移せるものとしましょう。

専門家と連携しよう
新規事業を立ち上げるには、迅速さが要求されます。試行錯誤するのは仕方ないですが、既存事業と並行する以上、人員や資金面でできる限り影響を及ぼさないようにしましょう。 そのためには、自社にない専門性を外部に求めることも大事です。そうすることで、成功確率向上も期待できます。
場合によっては、M&Aを活用しスピードアップすることも検討しましょう。

情熱をもって事業を進めよう
社内の既成組織で新規事業を進めるには、社長の情熱が必要です。リーダーの熱意も不可欠ですが、何よりも経営者の情熱に勝るものはありません。新規事業ゆえに生じる内外部からの反発に応えるためにも必要です。

撤退のルールを作ろう
上手く新規事業を展開できない場合に備え、撤退ルールを作りましょう。
人材や資金への影響、そして無用な経営への不安をむやみに広げることは回避したいですね。そのため、事業撤退の引き金となる指標値、あるいは期限を、事業計画に明示しておきましょう。リスク管理をすることで、撤退を将来の成功の礎とすることができます。

見出しアイコン新規事業に果敢に挑む大企業もあります

最近、家電のシャープがマスクを作り始めました。市場ニーズ、クリーンルーム(強み)、衛生面の専門家との連携、そしてトップの迅速な判断(タイミング)が融合した新規事業の立ち上げです。小回りが利きづらい大企業ながら、参入決定から1ヶ月で量産体制を作りました。今回を機にシャープは健康事業に本格化参入するようです。市場の動きを捉え自社の強みや保有資源を投入し、果敢に新規事業に取り組みましょう。

専門家紹介


西川 邦広さん画像

中小企業診断士

西川 邦広

専門分野

□ 事業計画(新規事業、創業、事業承継等)、資金調達、金融再生

□ 経営改善(課題発掘、行動計画作成とモニタリング)、組織活性化

□ M&A(買収、売却、廃業、事業連携等)

□ リスク管理、事業継続(BCP他)、内部管理体制

□ IPO(上場等)準備

自己紹介

東京外国語大学卒業。ゼネコン勤務後(原価管理、契約管理、労務、不動産開発等)、証券会社で海外駐在を含む31年間に、経営企画、企業再生、リスク/内部管理、介護施設運営他に関与。財閥系ゼネコンの社外取締役歴任。中小企業支援では建設/住宅設備/観光バス/外食/小売・卸/介護等企業の経営支援実績。中小企業診断士、宅地建物取引士、ロジスティクス管理士(物流)、CFP。資金調達や介護事業に関する執筆あり。東京都在住。

・この専門家の他の記事をみる

・このカテゴリーの他の記事をみる

Engunのメールマガジンに登録する
Engunの冊子をダウンロードする

Introductionご案内

Engunの専門家に質問する