経営企画・戦略立案

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2020/3/11

中小企業が利用できる補助金・助成金について覚えておきたいこと

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政府や都道府県、市区町村には、中小企業向けの補助金・助成金の制度が多数あり、優良企業の多くは上手に活用しています。全体像を理解し、活用できる補助金・助成金の探し方を覚え、対応のポイントを押さえてチャレンジすれば、企業運営の大きな助けになります。
今回は補助金についてよくある質問に、多くの補助金活用支援の実績があるKAN経営企画代表の漢那宗丈氏が具体的にお答えします。

中小企業からのよくある質問

中小企業支援のための補助金に興味がありますが、たくさんあってよく分かりません。そもそも補助金とはどういうものなのか教えてください。

この質問に回答する専門家

漢那 宗丈さん画像

KAN経営企画

代表

中小企業診断士

漢那 宗丈

大手総合電機メーカーのIT部門で事業企画・製品企画・マーケティングに従事すると共に、組織設計・改革に参画。経営コンサルタントとして独立後は中小企業の事業計画やマーケティング・組織改革などを支援。

目次

見出しアイコン中小企業向けの補助金・助成金の全体像を把握しよう

補助金・助成金に明確な定義はありません。経済産業省などが補助金、厚生労働省や東京都などが助成金の名称を使っています。いずれも支給された全額、もしくはその一部は返却の必要がありません。書類作りや事務手続きなどの煩わしさはありますが、それに見合う以上の事業資金を得ることができるので、多くの優良企業が有効に活用しています。

補助金・助成金の目的は、経済を良くすること

多くの補助金・助成金は、きちんと事業を運営している企業に支給し、業績を向上させることで税収と雇用を増し、経済を活性化させることが目的です。補助金・助成金を活用するには、日頃から事業計画に基づいた事業運営を行い、どのような事業資金がいつ必要かを把握することが必要です。

補助金・助成金のタイプは大きく分けると2種類

補助金・助成金のタイプは大きく分けると、事業強化(上図青部分)を支援する補助金と、従業員の処遇改善(上図赤部分)を支援する助成金があります。

応募後の審査で採択が決まる補助金・助成金がある

従業員の処遇改善に関する助成金などの多くは、応募要件を満たせば支給されます。ただし、用途は厳密に規定されています。これに対し、事業強化に向けた補助金・助成金の多くは金額が大きく、様々な用途に使えます。多数の応募があるので、審査によって採択が決定されます。私がものづくり補助金の審査に関わった際は、かなりレベルの高い応募申請書が採択されていました。

見出しアイコン中小企業が活用できる補助金・助成金の探し方とは?

全国の市町村を含め膨大な数の補助金・助成金があるため、その中から自社の活用できるものをタイムリーに見つけなければなりません。現在ではネット上に便利な検索ツールが提供されています。これらを上手に活用しましょう。

全国の補助金・助成金を簡単に検索できるサイトがある

適当に補助金・助成金を探すのではなく、必要なものをタイムリーに探すことが有効活用の第一歩です。 その手段として、様々な中小企業支援施策などを紹介している「ミラサポ」があります。そのほか、全国の補助金・助成金・融資の中から、自社が応募可能なものを検索できる「J-net21」というサイトもあります。

https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support/ (「補助金・助成金・融資」検索ページ|J-net21)

必要な補助金・助成金に巡り合うには

自社に必要な補助金・助成金を見つけるには、先に示した図で、どのような目的に対応した補助金・助成金があるのか把握しましょう。ほとんどの経営課題に対応しており、ネットで検索すれば、概要も分かります。 日頃から事業計画に基づいた事業運営を行っていれば、どのような時期に事業資金が必要なのか分かるはずなので、必要に応じてミラサポで検索しましょう。

応募申請のタイミングを逃さないために

東京都には、販路拡大助成事業として展示会出展費用を助成する補助金・助成金があります。要件を満たせばほとんどの応募申請が通るのですが、予算額に達すると募集が打ち切られます。日頃からミラサポなどで、補助金・助成金の状況に触れておくことが重要です。

見出しアイコン採択される応募申請書を作成するには

審査がある補助金・助成金には、用途の自由度が高く、かつ金額の大きいものが多いため、多数の応募があります。採択率の高い応募申請書を作成するには、補助金・助成金の目的を理解し、これに応える内容にする必要があります。採択率が30~50%程度であるものづくり補助金を例に、応募申請書作成のポイントを示します。

公募要領を熟読し、補助事業の趣旨・目的を理解しよう

ものづくり補助金には公募要領があり、補助事業の全てが記載されています(内容は毎年変更)。ものづくり補助金に限らず、補助金・助成金に応募する場合は、要領や要綱を熟読しましょう。この事業の趣旨や目的に加え、補助対象となる支出項目、申請書の書き方まで詳細に出ていますので、それに沿って応募申請書を作成しましょう。

審査方法・基準を熟読し、採択のポイントと加点方法を把握しよう

補助金・助成金の目的は、企業の事業拡大で税収と雇用を増大させることです。そのためには、補助金・助成金を受けた事業が成功し、企業の収益向上に貢献する必要があります。 その可能性を見極めるために、ものづくり補助金では「審査方法・基準」が示されており、これに沿って採点が行われます。 また、要件を満たすと加点される項目が示されており、申請中も対象となるものもあります。審査に関わった経験上、僅差で決まっているケースも多いと推測されますので、できる限り対応しましょう。

ものづくり補助金のポイントは革新性・有効性・実現性

多くの補助金・助成金事業は、事業計画に基づき事業運営している企業に補助を行います。ものづくり補助金の「審査方法・基準」のポイントは革新性・有効性・実現性です。革新性では、その事業がこれまでの延長ではなく、工夫された新しい取り組みであることが必要です。有効性は、その事業にとって十分な規模の市場があり、ニーズに合った製品であるなど、成功確率の高さを示すことが求められます。実現性は、企業に補助事業を実現する能力があるかが求められており、それを示す必要があります。 応募申請書作成に取り掛かる前に不足部分がないか見直しましょう。

見出しアイコン申請から採択、実施報告までの流れを着実に実行しよう

応募申請が採択されても、すぐに補助金・助成金が支給されるわけではありません。採択後もいくつかの書類提出や審査が必要であり、事業終了後の確定審査が承認されて初めて支給されます。したがって、補助金・助成金の事業に使う資金は、事前に準備が必要です。

必要書類をタイムリーかつ的確に提出しよう

ものづくり補助金の場合は、採択後に「補助金交付申請書」を提出し、補助金交付が決定され、通知書が送られてきます。この時点で補助金事業が開始されますが、開始前に発注すると補助対象外となります。その後、「補助事業推進状況報告書」の提出が求められ、それに基づき中間監査があります。 補助金事業には期限が決められており、それまでに購入品の支払いを完了しなければなりません。完了後に「実績報告書」を提出し、それに基づいた確定審査に合格して、「補助金精算支払請求」を提出して、やっと補助金が支給されます。このように必要な書類が多いため、タイムリーかつ的確に提出しましょう。

外部リソースの活用も検討しよう

補助金・助成金の申請が採択されるには、レベルの高い応募申請書が必要であり、採択後も色々と手間が掛かります。その点を、公募する前によく理解し、社内の体制を考えておく必要があります。 しかし、多くの中小企業は社内リソースが十分ではありません。そこで検討すべきは外部リソースの活用です。補助金・助成金の活用を多く支援した専門家は、レベルの高い応募申請書の作成が可能ですし、採択後の処理にも慣れています。 ただし、最初の検討は一緒に行いましょう。自社の事業を整理分析して、補助金・助成金を申請する新しい事業の市場・競合・自社製品の強みなどを一緒に検討してください。それによってより良い応募申請書が作成でき、今後の事業展開の助けになります。

見出しアイコン補助金・助成金の活用で企業を一層元気に

補助金・助成金の獲得と活用には手間が掛かりますが、それ以上にはるかに大きな事業資金を得ることができます。それにより事業を拡大し収益を上げ、税収や雇用に貢献できれば、日本社会の発展に寄与することになります。 また、応募申請書の作成で、自社の事業を見直し、新しい事業の作戦を立てることは、事業体質を強化することに大きく貢献します。

専門家紹介


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KAN経営企画

代表

中小企業診断士

漢那 宗丈

専門分野

□ 事業企画 ・・・ 経営分析、市場分析、ビジネスモデル構築、売上損益計画    など

□ 新製品開発 ・・・ 市場性調査、競合分析、ターゲット市場選定、製品仕様策定  など

□ マーケティング ・・・ デビュー戦略、販売チャネル戦略、広告宣伝戦略     など

□ 補助金取得活用 ・・・ 製造業から医療関係まで支援実績多数

□ IT導入 ・・・ 導入予定の業務分析、ITシステム仕様策定、ITベンダー選定 など

自己紹介

信州大学工学部大学院終了後、日立製作所のIT部門に勤務。10年間コンピューターハードウェアの開発設計に従事し、その後は一貫して事業企画・製品企画に所属して、事業計画や製品企画、マーケティングに従事すると共に、組織設計・改革にも参画。退職後に経営コンサルタントとして独立し、中小企業の事業計画、マーケティング、IT導入、組織改革などに加えて商店街振興などを幅広く支援。
KAN経営企画ホームページ  https://mkanna.wixsite.com/kanna

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