人事・労務管理

人材定着

2020/3/9

失敗しない、中小企業のための従業員アンケート調査のやり方とは

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中小企業も働き方改革は避けられません。しかし、闇雲に残業時間を減らすと業務が回らなくなるため、組織と業務の効率化が必要です。そのために、まずは自社の実態を把握しましょう。従業員アンケート調査が有力な手法ですが、漫然と行うと「モチベーションが低いのは分かったが、どう対処すればいいかが分からない」ということになりかねません。設問や実施方法を工夫することで、実態を把握でき、改善のヒントが得られます。
今回は従業員アンケート調査についてよくある質問に、多くの中小企業の支援実績があるKAN経営企画代表の漢那宗丈氏が、実例に基づいてお答えします。

中小企業からのよくある質問

自社の実態や課題を洗い出すために従業員アンケート調査を検討しています。どのように実施すれば実情が掴めるのでしょうか。調査を行う上でのポイントがあれば知りたいです。

この質問に回答する専門家

漢那 宗丈さん画像

KAN経営企画

代表

中小企業診断士

漢那 宗丈

大手総合電機メーカーのIT部門で事業企画・製品企画・マーケティングに従事すると共に、組織設計・改革に参画。経営コンサルタントとして独立後は、中小企業の事業計画、マーケティング、IT導入、組織改革などを

目次

見出しアイコン働き方改革の前に組織と業務の効率化を

慢性的な人手不足の中で優秀な従業員を確保するには、働き方改革によってワーク・ライフ・バランスの良い職場を実現し、従業員満足度を高める必要があります。そのために組織と業務の改善が必要ですが、改善の第一歩は自社の状況把握です。

「従業員満足度の高い職場」がもたらすもの
日本人の意識が少しずつ変化し、特に若い人はやりがいのある仕事や快適な職場環境を強く求めます。業務に適した組織で、無駄の少ない業務を、教育され能力の高い従業員が、モチベーションを維持して行えば、おのずと高い従業員満足度が実現されます。このような従業員は自発的に業務改善を行い、それにより収益性の高い事業が実現され、残業が減りワーク・ライフ・バランスが実現されます。強制的に残業を減らし、隠れ残業などで従業員を苦しませるのは、働き方改革ではありません。

従業員満足度の高い職場を実現するには
適切な組織、無駄の少ない業務、従業員のモチベーション向上のためには改善が必要です。改善の第一歩は状況の把握です。多くの優良企業が実践しているPDCAサイクル(下図参照)を回すことで、継続的な改善を実現します。特にC(チェック)は状況の把握であり、これなくして改善方法を考えることはできません。

見出しアイコン改革に向けた実態の把握は簡単ではない

改革のために、業務の流れや、組織が業務に合っているかどうかを把握しましょう。まず、業務や組織の分析を行います。難しいのは従業員の状況把握で、考えや思いを理解することです。組織を動かすのは従業員であり、従業員満足度の向上が大きな目的ですが、人の心を把握するのは難しいことです。

従業員アンケートが有力な手段だが…
このような調査には従業員アンケートがよく使われます。世論調査とは違い、まず設問を考える必要があります。アンケート調査は、傾向を掴むには最適ですが、実態を掴むには設問の工夫が必要です。また、自分の考えを会社に知られたくないと思う従業員もおり、実施方法にも工夫が必要です。

目的に沿った設問や結果分析、アフターフォローを
アンケート内容を決めるには、まず経営者が何を知りたいかが重要です。たとえば、離職者が多い部署の課題、業務が円滑に遂行できない組織の課題など、知りたい課題を明確にします。問題がある部署の状況を想像して、それを炙り出す設問と分析方法を考慮してアンケート内容を決定します。そして、従業員のプライバシーに配慮して実施します。このようなアンケート調査では、どの部署にどのような課題がありそうかを把握することはできますが、アンケート調査だけで改善に結びつくような具体的な課題を掴むことはできません。調査結果に基づくヒアリングなどのアフターフォローが重要です。

見出しアイコン従業員アンケート調査による実態把握には工夫が必要

従業員アンケート調査で有効な結果を得るには、会社の課題などに応じて個別にアンケートを設計することが必要です。実際に、従業員約100人の製造業が2019年に実施し、業務改革に有効に活用された事例を紹介します。

事例1.従業員の本音を知るには外部委託もひとつの手
当社は、これまでも従業員アンケートを実施していましたが、従業員の本音が聞けず、課題解決につながっていない状況でした。
そこで経営者は、従業員を特定できないアンケート調査を外部委託しました。これを全社で実施し、従業員に実施方法と趣旨を告知することで本音を引き出すことに成功したのです。また、経営の専門家集団が設計することで、当社の課題の抽出が可能なアンケートを実施することができました。

事例2.課題の原因となる部署や問題点を絞り込むアンケート設計が重要
当社の課題は①厳しい労働環境でのモチベーションの維持②製品に不具合が出た時の迅速な収束③提案型営業の実施、でした。①に関しては、「自分の仕事にやりがいを感じていますか」などの一般的な設問で対応しました。
これに対して、②③は組織の役割や業務の流れを分析し、以下の仮説を立てました。
②⇨製品に不具合が出た時に迅速な対応ができてないのは部門間の連携が悪いのが原因
③⇨提案営業ができていないのは、営業をバックアップする体制の不足が原因

これらを確認するための設問と、一般的に状況を把握する設問を織り交ぜたアンケートを実施しました。また、フリーコメント欄を設け、日頃感じていることを書いていただきました。

見出しアイコン課題を炙り出す調査とアフターフォローで改善を

従業員アンケート調査結果を分析すると、従業員のモチベーションの低下はみられないものの、どの部署に問題があるかが炙り出される場合があります。
この分析結果に基づいて該当部署にヒアリングを行うことで、問題を具体的に把握できます。その後対策に乗り出し、成果が上がっているという事例も合わせて紹介します。

事例1.不具合に迅速に対応できない原因のボトルネックがあった
当社のアンケート設問では、組織運営にとって望ましいものからそうでないものまで、3~4レベルで回答していただきました。たとえば、「仕事上の悩みはあるか」に対しては「ない、少しある、非常にある」の3レベルです。
部署ごとに望ましくない回答を集計してみると、生産管理部に集中しており、そこがボトルネックになっていると分かりました。ヒアリングの結果、不具合対応をコントロールする責任部署であるにもかかわらず、他部署に指示を出す権限が十分に与えられていないと判明しました。それが迅速な対応を妨げているだけでなく、この部署の従業員のモチベーションの低下を招いていました。
人材の強化と権限を見直した結果、不具合対応の迅速化が実現されました。

事例2.提案営業ができていない大きな原因が分かった
当社の提案営業の最大の課題は、経営者は問題意識をもっていたが、従業員に問題意識が十分に伝わっていないことでした。営業部は、業務が順調との回答がほとんどで、「結果を出せていない」と感じていませんでした。また、設計など関連する部署の支援体制が十分ではないことも分かりました。
そこで経営者自らが、営業部や関連する部署に、提案営業の重要性やバックアップする体制の必要性を説明し、各部署に改善計画の作成を指示しました。少しずつ改善に向かって動き出していますが、一朝一夕で実現できる課題ではないので、継続的な取り組みが必要です。

事例3.フリーコメント欄には業務改善のヒントが一杯
日頃困っている事や改善してほしいことがフリーコメント欄に詰まっていました。当社を少しでも良くしてほしいという思いで一杯です。各部署の長が、これらを一つずつ吟味して業務改善すれば業務の効率化が実現します。また、提案した従業員の意見が反映されることで、モチベーションの向上が期待できます。

見出しアイコン高い従業員満足度を実現するために

企業は常にPDCAサイクルを回すことで事業を成長させ、高い従業員満足度を実現する職場環境を作ることができます。ここで重要なのは、自社の組織や従業員の状況を的確に把握し、必要な改善や改革を実施し続けることです。
課題の炙り出しが工夫された従業員アンケート調査は、従業員の状況を把握する有効な手段だけに留まりません。アンケート調査結果の報告の実施や意見の反映によって、モチベーションの向上と会社へのロイヤルティを醸成します。
一方で、アンケート調査は従業員にとって煩わしいものです。結果報告などのレスポンスをタイムリーに実施し、有効に活用して下さい。

専門家紹介


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KAN経営企画

代表

中小企業診断士

漢那 宗丈

専門分野

□ 事業企画 ・・・ 経営分析、市場分析、ビジネスモデル構築、売上損益計画    など

□ 新製品開発 ・・・ 市場性調査、競合分析、ターゲット市場選定、製品仕様策定  など

□ マーケティング ・・・ デビュー戦略、販売チャネル戦略、広告宣伝戦略     など

□ 補助金取得活用 ・・・ 製造業から医療関係まで支援実績多数

□ IT導入 ・・・ 導入予定の業務分析、ITシステム仕様策定、ITベンダー選定 など

自己紹介

信州大学工学部大学院終了後、日立製作所のIT部門に勤務。10年間コンピューターハードウェアの開発設計に従事し、その後は一貫して事業企画・製品企画に所属して、事業計画や製品企画、マーケティングに従事すると共に、組織設計・改革にも参画。退職後に経営コンサルタントとして独立し、中小企業の事業計画、マーケティング、IT導入、組織改革などに加えて商店街振興などを幅広く支援。
KAN経営企画ホームページ  https://mkanna.wixsite.com/kanna

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