海外進出・国際化

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2020/1/9

中小企業がはじめる、海外生産の進め方

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国内において人手不足は深刻です。今後ますます少子高齢化が進む流れの中で、海外生産という選択肢を検討する中小企業が増えています。今回は、中小企業が海外生産に取り組む際のメリットや注意点について、ジェトロで海外展開のサポートを行っている新輸出大国コンシェルジュの中薮博文氏が解説します。

中小企業からのよくある質問

国内生産ではコストがかかり、海外製品に対抗できないため、海外生産を始めたいと思っているのですが、ノウハウがありません。

この質問に回答する専門家

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中薮博文

複写機や医療機器のメーカーで海外営業や工場の責任者を歴任。駐在経験は累計で12年間に及ぶ。定年後は中小企業の相談を受け、海外展開のサポートを行っている。

目次

見出しアイコン海外実習生の帰国を契機に海外生産へ!?

少子高齢化ということもあり、海外からの技能実習生を受け入れる中小企業があります。 そんな中、技能実習生を受け入れることで海外生産のきっかけを作り、最終的に海外生産を成功させようと考える企業が多くなってきました。技能実習生を受け入れることにより、実習生の帰国後の就労環境整備に道筋をつけることができます。

実習生を受け入れる企業の経営者は、それを契機として、現地に適応しながら日本の労働文化や日本式の経営を広め、現地産業の諸問題改善に貢献することで海外生産を成功させたいと考えています。しかしそれらの経営者は、技能実習生が実習期間満了後に帰国しても、日本で習得した技術を活かすどころか就業の場もない、という現実を知らなければいけません。また、日本的な人材育成の考え方は、現地では通用しないという現実も理解する必要があります。

見出しアイコン海外生産のメリットは?リスクにはどう対処する?

まず、海外展開には2つの方法があります。ひとつは自社商品を海外へ輸出するという方法、もう1つは直接投資、生産拠点あるいは販売拠点を現地に設けるという方法です。海外生産は後者にあたります。
海外生産の事業運営上のメリットは、第1位が「コスト削減」、第2位が「現地販路拡大」、第3位が「既存の取引先維持」、第4位が「国内での販路拡大」となっています。海外で現地生産することでいろいろな取引関係が生まれ、その取引関係が今度は日本国内でまた生まれてくるということになります。このようなメリットは、自社商品を輸出するという海外展開方法にはないものです。

上記のようなメリットがある一方で、大きなリスクが伴うこともまた事実です。その点は国や地方自治体も十分に理解しており、様々な補助金・助成金を用意しています。 例えば、中小企業を対象として、海外拠点設立・移転に向けた調査費等に100万円相当が支給される制度があります。これは、グローバル戦略の策定、実施に必要な経費の一部を支援することで、中小企業の国際化を促進するために策定されました。 このような制度があるので、海外生産を成功させるノウハウとして、日本政府関連の補助金・助成金をウェブ等で調査することをお勧めします。

見出しアイコン海外生産の形態

海外進出の形態には、現地法人、支店、駐在員事務所等があります。支店、駐在員事務所は法人登録不要で法人格を持ちませんが、設置に当たっては進出国に許可・認可が必要です。
海外生産の場合は工場が必要になりますが、工場を設立することは営業行為となるため、駐在員事務所では対応ができません。

また、支店の場合は営業行為はできますが、現地生産ができません。そのため、こちらも工場の設立は不可です。
すなわち海外生産のプロセスは、まず進出場所の選定をし、現地法人を設立するところからスタートします。その後、本社支援体制、及び現地管理体制(日本人責任者の駐在手続きを含む)を構築し、工場設立となります。また、現地人材採用での工場立ち上げであるため、地方政府との関係構築がとても重要です。

現地法人設立は独資がいい?それとも合弁?
中小企業が現地法人を海外に設立し事業を運営するには、「独資」と「合弁」という二つの方法があります。今回の場合、独資とは日系企業が100%の出資を行なうことを指し、合弁は日系企業と外国企業(もしくはその他の経済組織)との共同出資を指します。 現地法人設立における独資、合弁のメリット・デメリットは以下になります。
日系企業にとって、独資と合弁のメリットおよびデメリットについてみますと、独資には、以下①②③のメリットがあるといえます。
  • ① 出資者の自由な意思決定を行うことが可能、業務に関する意思決定にあたり機動的に対応することができる。
  • ② 海外企業等に機密や技術、ノウハウ等の流出を防ぐことができる
  • ③生じた利益を独占することが可能。

他方、独資には以下①´②´③´のデメリットがあります。
  • ① 海外企業等の販売網やノウハウを活用することが難しい。
  • ② 出資の負担が大きい。
  • ③業種によっては独資企業の設立が禁止されていることがある。


これに対し、合弁のメリットおよびデメリットは、上記独資のメリットおよびデメリットのそれとは反対ということになります。
引用元:「海外進出の方法とそれぞれのメリット・デメリット|明倫国際法律事務所」

各企業で独資に向いているか、合弁に向いているかが違うかと思いますので、自社の状況に合った選択をすることが重要です。

見出しアイコン海外生産に乗り出す際の注意点

中小企業が海外生産のために現地でのレンタル工場を確保する場合、最小限の投資を考え、必要最低限のスペースを確保することが多々あります。

しかし、海外生産が順調に進み工場稼働率が高くなってくると、スペースが不足してしまいます。それにより、引っ越しせざるを得なくなり、むしろ費用負担が増えてしまうケースが多く見られます。
また、海外生産での重要原材料・部品が現地で調達可能かどうかを事前に十分確認しておくことが必要です。
さらに、目標とする生産稼働のレベルを見極めて投資計画を策定する必要もあります。
反対に、生産稼働の最低限レベルを設定しておき、設定レベル以下になったら撤退も含めた経営上の判断ラインを決めておくことも必要です。

見出しアイコン国内に拠点を増やすのとは違うことを認識しよう

今後、中小企業はグローバル展開の中で海外進出(現地製造)を検討せざるを 得ない状況が多くなってくると思われます。海外生産は日本国内に拠点を増やす場合と異なり、法規制、商習慣、言語が違いますので 思わぬ地雷を踏むリスクがあります。 海外での拠点づくりには、その地域ごとの特性を踏まえ、自社の目的がそれらに合うかどうかを考慮したうえでの進出決定が必要です。

また、必ず複数の候補地を検討するようにしてください。

重要なのは『何のために進出するのか』を考え、決して安易な動機で進出しないことです。安全な海外生産を進めるためには、外部専門家を活用し知見を得て、適切な方法を見つけることが重要です。

専門家紹介


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中薮博文

専門分野

□ 中小企業の海外展開支援

自己紹介

▼現役時代の仕事内容
複写機・医療機器メーカーでの海外営業、貿易経営等
海外での駐在経験(累計12年間)もある

▼定年後の仕事内容
海外展開をしたいと思う中小企業の相談を受け、専門家と企業を引き合わせ海外展開の手助けをする仕事を行っている。
▼定年後も働こうと思った理由
・社会との接点が欲しい。
・自分の専門を活かしたい。

▼趣味
・旅行

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