外部人材活用

外部人材活用

2020/3/27

ITにおける外部人材の活用を成功させるためのコツとは

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IT専任者を雇用できない中小企業は、その時々に応じて外部人材を活用する必要があります。しかし、ITに詳しくなく、IT人材と共に仕事をした経験にも乏しい場合、どのように活用したらよいか戸惑うこともあるでしょう。ここでは、どこで外部人材を探し、どんなことに留意して、どんな形態でIT人材を活用すればよいか、独立コンサルタントの三林英毅氏が解説します。

中小企業からのよくある質問

ITに精通した人材が社内に足りないため、外部の専門家に支援をしてほしいと思っています。しかし、外部人材にお願いしたことがないため、どのように依頼し、どこまでお願いすればよいかわかりません。外部の専門家を上手に活用するためのやり方を教えてください。

この質問に回答する専門家

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三林英毅

大手SI会社、監査法人系コンサルティング会社、生命保険会社にてエンジニア、コンサルタントとして多くのプロジェクトに従事。証券会社系総合シンクタンクにて内部管理、財務・経理の業務を行い2015年に独立。

目次

見出しアイコンITの外部人材はどこにいるか

中小企業がITの外部人材を探す先は、主に以下の3つになります。

コンサルティング会社
1つ目は、IT分野に実績のあるコンサルティング会社です。組織として蓄積したさまざまな課題解決のノウハウを提供してもらえます。会社ごとに、または、コンサルタントごとに得意とする業界、業務分野、技術、製品などを明確に掲げています。ただし、料金は高額なことが多く、コンサルタント1人の時間あたり単価が数万円になることもあります。

ITベンダー
2つ目はITベンダーです。ITシステムを販売または開発するベンダーは、自社の顧客をサポートする要員を抱えています。中小企業がITシステムを導入する際には、多くの場合、導入するITシステムに加えて、そのシステムと他システムの接続部分まではサポートしてもらえます。しかし、それ以外のITに係る業務は基本的に対象外です。有償で引き受けてもらえる場合は料金が高額になりがちです。また、こうした人材は自社の提供するITシステムには精通していても、その他のシステムやIT全般についてのノウハウが乏しい場合もあります。

個人事業主
3つ目は、最近労働市場への参入が増えている個人事業主のIT人材です。特に、豊富なIT業務経験を持ったシニア人材です。また、副業が可能になった大企業に勤務するIT専門家も外部人材活用に含めてよいでしょう。個人として活動しているため、コンサルティング会社やITベンダーに所属している人材より安い料金で活用できます。人づての紹介に加え、公的機関が運営するマッチング交流会や、マッチングサイトを使い、自社に最適なIT人材を探すことになります。ただし、得意分野を明確にしている企業と違って、個人が持つノウハウの見極めは難しく、慎重に行う必要があります。
具体的にどのようなIT人材を探すべきなのか等については、私が書いた当サイト内の記事「 中小企業に必要なIT人材」をぜひご参照ください。

見出しアイコンITの外部人材を活用する契約形態

以下は、ITの外部人材活用で用いられる主な契約形態です。依頼する業務、期間によって使い分けます。

請負契約
請負契約とは、IT人材を抱える企業に、ITシステムなどの成果物の完成の責任を負ってもらう契約形態です。実際のITシステム導入をITベンダーに依頼する場合などに限られるので、中小企業の外部人材活用で使われるのは稀です。

業務委託
業務委託では、依頼する仕事の完成を条件とせず、「XX日/YY時間働いて、いくら払う」という形で契約します。個人とも企業とも結べます。依頼した仕事の実施状況を一定期間(日/週/月)ごとに報告してもらい、依頼通りに進んでいるかチェックを行う必要があります。

期間を定めた雇用契約
中小企業では、ITに係る業務が日常的に発生することは少ないです。そのため、新たにITシステムを導入する時や、機能追加を行う時など、一定期間に渡ってまとまった業務が発生する際には、期間限定での雇用契約という選択肢もあります。ただし、働いてもらう時間などによって、支払う報酬の他にも社会保険料の負担などが発生することに注意する必要があります。

派遣
IT人材を抱えている派遣会社もあります。雇用する場合と同様に、仕事の進め方について直接指図できます。期間限定で、依頼する仕事内容が詳細まで明確になっている場合は有力な選択肢です。

見出しアイコンITの外部人材活用にあたっての注意点

中小企業が業務委託、雇用、派遣によって、外部人材活用を行う時に注意すべき事項を確認しておきましょう。

業務内容と目標を明確にしてから依頼する
最も重要なことは、IT活用に係る自社の課題と依頼する内容を明確にするということです。例えば、
・過去に営業活動を行った顧客の情報を、ITを使って全社で活用できるようにしたい
・導入済みの経理システムを使って、営業所ごと営業マンごとの収支を把握したい
・外回りの営業マンが、商談時に最新の在庫情報を端末で確認できるようにしたい といったことです。
仕事の成果もしくは目標を具体的に決めることも重要です。例えば、
・ITベンダーに依頼する前段階の要件定義書作成か、
・実際のITシステム導入か、
・導入後の一定期間の運用も含めるか
といったことです。

漠然とした依頼はNG
「IT活用が遅れているからなんとかしてください」といった漠然とした依頼は禁物です。 外部人材が仕事を依頼される時点では、依頼主の業務について多くは知りません。したがって、こうした漠然とした依頼に対しては、仕事を引き受けるリスクを勘案して、高めの見積もりを出します。
高額の見積もりを受けた中小企業は、予算の制約から、そのIT人材を使うことを諦めざるを得なくなってしまいます。あるいは逆に、ITに詳しくないからといって、言い値で発注してしまい、本来は不要であった業務にコストをかけてしまいかねません。

依頼した仕事の成果を必ずチェックする
外部人材に仕事の成果を保証してもらうことはできないので、一定頻度で目標に対しての進捗をチェックする必要があります。ITに詳しくないからといって、一任するのは禁物です。

流行IT用語に踊らされてはいけない
ITに詳しくないことを引け目に感じていらっしゃる方は、新聞、テレビ、ネットなどで目にする最新の技術や概念を、自社の業務に適応できないか考えてしまいがちです。
例えば「RPAで経理業務を楽にできないか」、「営業効率が良くないのでCRMを使ってなんとかしたい」といったことです。
しかし、これらのキャッチーな用語の多くは、ITベンダーやコンサルティング会社が自社の製品やサービスを売るために生み出したもので、中小企業の個別の課題解決に役立つとは限りません。自社の業務上の具体的な課題を中心に考えましょう。ITは課題解決のための手段にすぎません。

公的補助を上手に使う
外部人材活用に公的補助が活用できることがあります。例えば、中小企業庁の委託事業として行われている「ミラサポ」では、年3回まで専門家を無料で派遣申請でき、IT分野も対象になっています。

見出しアイコンITの外部人材は必要な時に、必要なだけ活用する

ITの外部人材は必要な時に、必要なだけ活用する
ITを事業としている、あるいは、IT活用が競合他社との差別化の決定的な要因になっている場合を除き、ITは中小企業の生産性向上と事業の成長のための手段です。必要な時に、必要なIT人材を使うという姿勢で臨みましょう。
「こんな短期間でよいのか」、「使い捨てにするようで申し訳ない」といった配慮は、ITの外部人材活用においては無用です。中小企業の多くが必要とする外部人材は、長期契約やフルタイム雇用にこだわらず、自身の持つ経験やノウハウを売ろうとします。このようなIT人材を上手に使えば、IT専任者が社内にいないという不利をカバーできます。



専門家紹介


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三林英毅

専門分野

□ IT導入・活用支援

□ 内部統制、コンプライアンス

□ 管理会計

自己紹介

これまで、① ITベンダー、② ユーザー企業のIT担当者、③エンドユーザー、④ 第三者のコンサルタント の4つの立場で、ITシステムの導入から運用までの実務に従事してきました。お客様がITシステムを活用して、効率的な業務を行い、事業を拡大発展させるお手伝いをします。アドバイスだけではなく、設計書、業務フロー、手順書などをお客様とともに作成し、 長期的に経営管理業務を担っていける人材の育成も行います。

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