人事・労務管理

人材定着

2019/10/31

せっかく採用した中途社員が辞めないために。 中小企業でもできる人材定着の手法

[せっかく採用した中途社員が辞めないために。 中小企業でもできる人材定着の手法]トップ画像

「きっと活躍してくれる」「わが社にあった良い人が採用できた」と思ったのに…1年も経たないうちに退職。せっかくコストをかけて採用した人材がすぐに辞めてしまうのは会社にとって大きな損失。実は中小企業での中途社員の3年以内の離職率は3割を超えると言われていて、中小企業はみな人材確保に苦しんでいるようです。

今回は中小企業から中途採用者定着率についてよくある相談に、人事労務のスペシャリスト株式会社アンカーJ代表取締役千葉峰広氏がお答えします。

中小企業からのよくある質問

採用活動を苦戦しながらようやく2名採用できたのですが、半年も経たずに退職してしまいました。なぜ退職してしまったのか理由もわかりません。
どうすれば社員を定着させられるでしょうか?

この質問に回答する専門家

千葉 峰広さん画像

株式会社 アンカーJ

代表取締役

千葉 峰広

成蹊大学法学部を卒業後、大手外資電子部品メーカーに約 27 年勤務の後、2015年起業。人事労務のスペシャリスト。

目次

見出しアイコン中小企業の採用事情とは

有効求人倍率は全国平均1.59倍を超え採用すること自体が難関であり、超売手労働市場の環境からいとも簡単な理由でやっと採用できた社員も辞めてしまう昨今の採用事情です。この負のスパイラルに悩む企業は数多くあると思います。

このような状況に陥ってしまった場合、考えられる課題には、次のようなものが挙げられます。

①採用スペックが曖昧な上に期待や貢献の話合いが十分にされず、年収や初任給の駆け引きで入社を決めてしまう。

②自社の魅力を高めるための評価制度構築改善や管理職教育等に熱心でなく、入社処遇だけで採用しようとしている。

③入社後の即戦力の過度な期待やケアが十分でなく、中途採用者を孤立させてしまう。

採用した社員の定着に悩んでいる企業は、この三つの課題を中心に解決してみてはいかがでしょうか。

見出しアイコン中途採用者の定着率を上げるため採用前にできること

中小企業は採用の人物像にスーパーマンを求めがち?
まず非常に失敗しやすい採用したい人物に募集職種への深い専門能力だけでなく、欲張ってその周辺知識やマネジメント能力までも求めてしまうことです。

例えば、私は約27年の人事部勤務でそれなりの人事専門能力は持っておりますが、中小企業は1人何役も担うのが当たり前の世界…「人事部以外にも財務経理も見てもらえませんか?できれば貿易実務も見られますか?そして管理職もお願いします」といった具合です。

よって、採用準備段階では「絶対譲れない専門能力」と「絶対譲れない仕事の取り組み姿勢」を1~2つに絞り込み、残りの希望は「あれば尚良い」程度の人物像を作ることとお勧めします。求人票もこの会社が求める人物像の心に刺さるフレーズを考えてください。

採用の人物像を欲張りすぎないコツ
 ・絶対に譲れない専門能力を1つか2つに絞り込む
 ・絶対に譲れない仕事の取り組み姿勢を1つか2つに絞り込む
 ・絶対に譲れない希望以外の条件は優先順位を下げる

ブレない軸で面接をするために、事前準備はしっかりと!

書類選考や面接では、前もって決めた譲れない能力と譲れない仕事への取り組み姿勢に加えて、その仕事の会社業績へのインパクトや対外関係部署や仕事内容をまとめたシートにしておけば、採用選考基準と応募者からの質問にも答えられるものとなります。これを大いに活用してください。

また、「譲れない能力と譲れない仕事への取組み姿勢が相反した場合、貴社はどちらを取りますか?」という貴社の軸をもっておくことをお勧めします。
大企業では面接に募集部署の部長と総務人事とで面接することがよくあり、能力実績と仕事の取組姿勢で議論となることもよくあります。

そこで、ずば抜けた能力や実績を持っているが、プロセスや取組姿勢に難ありのA氏と能力や実績にすごさはないが、プロセスや取組姿勢に非常に共感できるものを持っているB氏がいた場合、貴社はどちらを採用するかの答えを持っているでしょうか。これは臨機応変に変えてはなりません。

専門家からのワンポイントアドバイス

採用選考段階での人物像の見極めはこれまでの経験と勘で進めていくしかなく、王道はありせん。盛られた職務経歴書や猫をかぶった面接を見破るような日々の訓練が必要です。

見出しアイコン中途採用者の定着率を上げるため採用後にできること

まずは、次のような採用後シーンを想像して下さい。

社員数100名程度の会社に中途採用者が1名採用されました。初日に総務人事が会社のルール説明と各部署の紹介を行い翌日から配属されます。わからないことは聞けば教えてくれますが、積極的には教えてはもらえません。あっという間に3ケ月、半年が経過し彼には顕著な結果が出ていません・・・・

多くの方は、「この中途採用者は辞めちゃうだろうな」と思われたことでしょう。
このような採用後シーンは、普通だと思われる方も多いでしょうし、まさにそこに「すぐ辞めてしまう。」原因が隠れているのです。引き抜きや縁故採用でもない限り、出社日当日は100対1の世界です。社員数が少なくなるほどこの疎外感は強くなることでしょう。

入社後に行われる入社オリエンテーションはできるだけ心のこもった歓迎の意を表したものを目指してください。
スケジュールやリソースの関係でオリエンテーションを1日程度で現場投入していた介護会社が、私の助言でオリエンテーションを「歓迎」の気持ちを前面に出したものに変えたことによって劇的に離職率が改善されました。

これまでの話からもわかるとおり、受け入れ側は中途採用者が孤立感や不安を強く持っていることに鈍感です。経営者、総務人事担当、配属部署の管理職が、「あなたの成長を支援する上司や仲間がいますよ」という態度で最初の3ケ月接してあげれば、1年以内に辞めるという事態はほぼ回避できると思います。

見出しアイコン特に注意したい中途社員のモチベーション

盛られた職務経歴書や猫かぶりの面接を見破りいいひとが採用できたならば、今度は貴社が説明会や面接時に語った「貴社の魅力」を実践する番です。
彼らが入社してくれた理由は、初任給条件に加え、①面白い仕事ができる。②プロフェッショナルとして成長でき、自分の市場価値が上がる。③業績を上げたら適正な処遇をしてくれる。からと再認識してください。

言い換えると、社員が希望をもって働き、辞めないような人事制度やマネジメントシステムに日々尽力しなくてはならないのです。

そのためには、本人の能力レベルに合った適切な仕事を与え、無理な残業をさせないよう仕事の負荷バランスをとり、困難な点には指導を行い、成長に合わせ刺激を与えモチベーションを高める話合いを重ねていきましょう。

社員30人程度の会社なら社長自らが実践できますが、それ以上の規模となると配属部署の管理職がキーとなります。中小企業では難しい課題だと十分承知していますが、ここをクリアしないとすぐ辞める負のスパイラルは止まらないと心得てください。

見出しアイコン人材の定着率が上がると会社が変わる!

冒頭の相談内容にあった、「全く採用できない」「いいひとがすぐ辞めてしまう」の原因や課題解決はこれまで話してきたとおりです。
要は「人を」消費して捨てる人材とみるのか? 貴社入社後も投資して成長させ価値を高めていく人財とみるのか?に尽きるのかもしれません。
譲れない能力や譲れない仕事の取り組み姿勢を曖昧なまま、年収や初任給の駆け引きだけで入社させてしまうと互いの不幸な将来となってしまうことでしょう。

そうならないためにも、採用準備では貴社の採用スペックを欲張らずに優先順位をつけて設定し、応募者には仕事の魅力や自己成長ができる期待や実績を上げれば適正な処遇をする評価制度を熱く語りましょう。

そして、入社後は、中途入社者を孤立させない配属部署管理職の配慮が確立されれば、入っては辞めの負のスパイラルから正のスパイラルに転換されるはずです。
見える採用コストの削減に加え、見えない採用活動や入社研修コスト削減や付加価値のない仕事がなくなり、皆が活き活きと貴社のコア業務に注力できることになると思います。

専門家紹介


千葉 峰広さん画像

株式会社 アンカーJ

代表取締役

千葉 峰広

専門分野

□ 人事・評価・賃金制度の設計と運用

□ 退職金制度(確定給付・確定拠出企業年金・中退共運営)

□ 規定制定・改定(就業規則、転勤・役員規・祝無分掌規程等)

□ 各種監査対応(SOX、ISMS、OHSAS、EICC、税務調査、労基臨検)

自己紹介

成蹊大学法学部を卒業後、大手外資電子部品メーカー日本モレックス株式会社(資本金 120 億円 従業員約 2,000 名)で約 27 年間人事部勤務。人事労務を中心に賃金制度、人事評価制度、退職金制度(確定給付年金)等の企画・施行に携わり、大手電子部品企業の人事部とも広く深い人脈がある。
2015年これまでの知識・経験を活かして、地域の人と企業が元気になれる事業を志して起業。1960年生まれ 藤沢市在住

・この専門家の他の記事をみる

・このカテゴリーの他の記事をみる

Engunのメールマガジンに登録する
Engunの冊子をダウンロードする

Introductionご案内

Engunの専門家に質問する