人事・労務管理

働き方改革

2019/10/31

中小企業の働き方改革!なかなか減らない残業時間を改善する方法

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2018年6月29日に成立した働き方改革関連法案は、2019年4月1日には改正法案が施行されました。中小企業でも順次適用され、その中の時間外労働の上限規制は2020年4月から適用されるとのことで、対応に追われている企業も多いのではないでしょうか。
特に「長時間労働の是正」の対策に頭を悩ませている担当者からの相談に、専門家のオフィス ア ライト 杉山達郎氏がお答えします。

中小企業からのよくある質問

働き方改革への対応を進めなければならないのですが、従業員は日々の業務の忙しさに追われており、残業時間がなかなか減りません。中小企業にとってはなかなか難しい問題です。どうすればよいでしょうか。

この質問に回答する専門家

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オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

慶応義塾大学卒業後、株式会社ニコン入社。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組み、現在は「労使がわかる社会保険労務士」と中小企業経営者の支援をしている。

目次

見出しアイコン働き方改革の目的とは

働き方改革には、二つの目的があります。一つは、「長時間労働」「正規・非正規間の格差問題」「少子化対策」と言った社会問題を解決することです。もう一つは、それらを通じて「働き手の増大」や「労働生産性の改善」を図るという経済対策としての面もあります。

具体的に言えば、長時間労働の是正は、健康被害の対策であることはもちろん、それ以外にも仕事と家庭生活の両立を図ることで、出産・子育てが容易になり得ます。またワーク・ライフ・バランスを改善することで、女性や高齢者も仕事に就き易くなります。さらに、正規・非正規間の格差を改善することで、非正規労働者のモチベーションが向上し、生産性が改善することが期待されます。

見出しアイコン残業を減らすメリットと気を付けたいこと

長時間労働を是正するメリットは社員の健康対策だけではありません。 最近の求職者は賃金だけではなく労働時間や福利厚生を就職・転職の重要な判断材料としているため、残業を改善することで求職者に対する良いアピールポイントとなります。

しかし、気を付けなければならないこともあります。もし単純に労働時間を削減し、生産性を改善できないとすると、企業としてアウトプットが減少してしまい、業績悪化につながることになります。また、社員にとっても残業代の減少がモチベーションの低下につながる恐れもあります。長時間労働を是正するためには、この点に気を付けて進めなければなりません。

見出しアイコンローコストで取り組める!ムダ探し改善施策

収益性を維持のために生産性を向上させるには、まず「業務の見直しによるムダな仕事の排除」が重要になります。
働いている社員は業務命令に従い働いているはずですし、本人もそう思っています。 ですから、ムダな仕事なんかないと思い込みがちですが、実は隣の社員も似たような仕事をしていたり、上司がその時だけ気になって調査を命じたものが不必要に継続している場合もあります。
自分では自分の仕事の不必要さに気が付かないことがあるので、職場全員で見直しを行うとムダを見つけやすくなります。特にムダかどうかすぐに分かる上司と一緒に行うことが重要です。

専門家からのワンポイントアドバイス

仕事を見直す際には、出社してから退社するまで一日を15分刻みでどんな仕事をしたか、何をしていたかを記載し、それを一週間ほどまとめて、それを基に議論すると良いでしょう。

見出しアイコン残業削減のため組織で取り組みたい4つのこと

個々人の業務のムダを省くのと同時に行いたいのが、組織の仕組み化です。ここでは多くの会社が取り組んでいる4つの例を紹介します。

①業務ローテーション
残業を削減できない理由で多いのは、仕事が忙しくかつその人しかできないから、という事情もあります。これには時間がかかることもありますが、業務のローテーションを行うなどして、社内で多能工化・マルチスキル化を図っていく必要があります。うまくローテーションが機能すると残業だけでなく、誰でも気兼ねなく有給が取りやすくなり、より働きやすい環境を作ることになります。

②残業事前申請制度
残業管理が本人任せになっている会社が時々あります。そうすると、不要不急の仕事まで残業して片付けようとする社員も出てきます。必要な仕事を必要な時間だけ行うように、本来当たり前のことですが、事前に上司に残業を申請することを義務付けます。
それにより、社員の労働時間に対する意識づけができ、上司も申請を基に残業管理をすることができるようになります。

③顧客を巻き込み業務改善提案
顧客からの急な要請などで残業が恒常化して、自分達だけではどうしても残業を削減できないという会社もあります。以前はともかく、現状働き方改革に対する社会の認知度は向上し、理解も深まりつつあります。どうしても自社で解決できない場合は、顧客に協力を依頼することも一つの方策です。

④会議時間短縮
会議が多く、自分の仕事が残業時間に食い込むという話もよくあります。会議を短くするために、みんなが立って会議をする「立ち会議」や30分以上会議をしないという「30分会議」など、会議に工夫することも効果があります。

見出しアイコンまとめ

残業時間の削減には、意識改革と仕事改革が必要です。
「残業をしない」という強い意志を持ち必要な時間内に業務を終わらせるように時間意識を高めること、今まで当たり前だと思っていた業務をもう一度見直してムダを見つけること、これらを通じて生産性を向上させることを、全社が一枚岩となって推進することが重要です。
そうすれば残業は削減し、それが社員のワーク・ライフ・バランスを改善し、会社の業績向上にもつながります。働き方改革を良い機会と捉え積極的に取り組むべきです。

専門家紹介


杉山 達郎さん画像

オフィス ア ライト

代表

杉山 達郎

専門分野

□ 人事・賃金制度の設計・構築、運用改善

□ 働き方改革制度導入・運用提案

□ 人事労務を中心とした経営管理支援

自己紹介

慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社ニコン入社。グループ会社である株式会社那須ニコン代表取締役、株式会社ニコン・エシロール執行役員生産企画ゼネラルマネジャー、オプトス株式会社取締役経営管理部長などを歴任。30代には、会社を休職しニコン労働組合中央執行委員長も担当。現在はニコンを早期退職し、オフィス ア ライト代表へ。企業におけるさまざまな人事労務課題について、労働者代表としてまた企業経営者として取り組んできました。その経験を基に、現在は「労使がわかる社会保険労務士」として中小企業経営者の支援をしている。

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